コスタリカ経済 定期報告(2012年10月)
※出典:中銀発表月次資料(9月又は10月分までの経済数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
1 経済活動指標
- 9月の経済活動指標は、前年比成長率で見ると、製造業が引き続き低下し、前年比0.09%増となったことが影響し、前年比3.41%増に留まった。
- 一方、建設業については、引き続き増加傾向が続き前年比4.49%増となった。ショッピングモールやオフィスビル建設によるもので、商業部門の成長(前年比4.97%増)とともに内需回復を示唆している。

2 貿易
- 1~10月の累積貿易額は、輸出が前年比9.3%増の9,474.6百万ドル、輸入が前年比9.5%増の14,641.6百万ドル、貿易赤字額は前月比で17.0%拡大し5,167百万ドルとなった。
- 10月単月では、輸入額が前年同月比15.0%増、輸出額が同比0.5%減となった。輸出額は、前年比5%を上回る減少となった前月と比較すると若干の回復とはなっているものの、本年5月以降減少傾向が続いている。



3 財政収支
- 9月までの中央政府の財政収支は、歳入、歳出ともに前年同期比9.7%増(前年歳入9.1%増、歳出9.2%増)となり、財政赤字の対GDP比率は前年同様の▲3.2%となった。
- 歳出においては、政府による支出削減努力による一定の効果が見られ、給与等に関する支出の増加率が前年より3.4ポイント低い9.0%、財やサービスの購入の増加率が前年より4.1ポイント低い6.3%となった。一方で、前年抑制した資本費用は増加に転じ、11%の増(前年5%減)となった。

4 物価上昇率
- 10月の物価上昇率は累積値で3.42%、年間換算値で4.69%となり、昨年とほぼ同水準となった。引き続き2012年の中銀目標値(4~6%)以内の安定的な水準に留まっている。
- 過去12カ月では、水道料金(39%増)、公共向け道路清掃サービス(25%増)、ゴミ収集サービス(19%増)の物価上昇が顕著であった一方で、通信分野は昨年11月の携帯電話事業自由化による効果が見られ0.8%の減少となった。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 10月の為替レートは、引き続き為替バンド下限に張り付き、中銀は計197百万ドルのドル買い介入(前月比▲34百万ドル)を行った。
- 10月31日~11月1日にかけ、一時的に1ドル504~505コロン台まで下落したが、これは財務省による10月末日で償還期限を迎えるドル建て国債の償還額(20百万ドル)財源確保によるもので、専門家の間では一時的な下落であると見られている。コロン金利高傾向に加え、年末に向けボーナス支払い等によりコロン需要が増すことにより、為替バンド下限の1ドル500コロン前後まで再び上昇する見込みである。

(2) 金利
- 10月の基本預金金利(2)は引き続き10.00%~10.50%の高水準を維持している。特に、国立銀行によるコロン建て金利の上昇傾向が著しく、チンチージャ大統領はこれを懸念し、国立銀行4行に対し原因究明を要請した。


6 外貨準備高
- 当局による計197百万ドルのドル買い介入の影響を受け、10月末時点の外貨準備高は5,366百万ドルに達した。これは10月の輸入額の3.3倍(3)に当たる。

7 主な出来事(10月)
(1)国内経済
ア 財政関連
- 財務省、ユーロ債発行銀行選定(10/19)
財務省は、11月に発行を予定しているユーロ債発行銀行としてドイツ銀行、シティ・グループの2行を選定したと発表。発行金額は5億~10億ドルの間となる予定。 - 9月までの財政収支、赤字幅縮まらず(10/20)
9月までの財政収支は、歳入が10.2%の増(前年9.3%)、歳出が9.7%の増(前年9.2%増)で、財政赤字は対GDP比3.2%となり、前年と同様の水準となった。歳入では、売上税が引き続き増加し、12.2%の増収(前年9%)となった。歳出では、給与関連支出の増加率が前年同期比より3.4ポイント減少し9%となった一方で、政府が公共投資の執行を推進したことにより資本投資が前年比11%増(前年5%)となった。
(2) 対外経済
ア 対外直接投資
- ブリヂストン社金融サービスセンター開設、250万ドルの投資で120の雇用創出(10/1)
ブリヂストン・コスタリカ社は、1日、チンチージャ大統領の出席のもと、金融サービスセンターの開設式を実施した。同センターは、250万ドルの投資により開設され、ラテンアメリカ7カ国での金融関連業務の標準化・効率化を目指す。同センターでは120名を雇用予定。
イ FTA・経済協定等
- 中米各国、韓国とのFTA交渉可能性を検討する会談実施(10/16)
コスタリカを含む中米各国(パナマ、ホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラ)は、サンホセを訪問した韓国貿易協定担当次長と、貿易・投資の動向や貿易協定交渉着手に向けた各国の見通しについて情報分析を行い、貿易協定の交渉の可能性について議論を行った。貿易担当次長のサンホセ訪問は、本年8月のチンチージャ大統領の訪韓時の合意によるもの。 - 対コロンビアFTA交渉第3ラウンド実施、交渉速度に減速の兆し(10/22~10/25)
10月22日~26日、ボゴタにて対コロンビアFTA交渉第3ラウンドが実施され、市場アクセスについて41項目(農業8項目、製造業33項目)で合意に達したほか、原産地規則についても97項目中70項目で合意に達した。交渉団長を務めるオカンポ貿易省次官が、次回ラウンドで交渉終了の可能性があるとする一方で、工業会議所を中心とした製造業界からは反発の声が高まっており、食料加工品やプラスチック等のセンシティブな分野についての交渉はペンディングとなっている。次回ラウンドは1月にサンホセにて実施予定。
ウ その他
-
電力民間購入枠140MWに予想を上回る28社360MW分が入札(10/1)
8月に実施されたコスタリカ電力公社(ICE)によるクリーン・エネルギーの民間からの購入枠140MW(1社あたり20MW)への入札募集に対し、28社から予想を上回る380MW分の入札が行われたことが明らかになった。現在コスタリカでは総電力供給可能量の21%を民間から購入しているが、法により30%まで購入可能となっている。 - サービス輸出、上半期に12.6の増加(10/3)
2012年上半期のサービス輸出額は前年同期比12.6%増の2,922百万ドルとなった。うち、43%を企業向けサービスが占め、50%を占める観光業に迫る勢い。通信関連サービス・企業サービスは過去12年間で約12倍に増加した。現在、財による貿易赤字の84.5%をサービス輸出による黒字がカバーする構造となっている。 - リーベルマン第2副大統領、OECDフォーラム参加でインド訪問、投資誘致も(10/16)
リーベルマン第2副大統領はOECD主催の統計・公共政策フォーラムに参加するためニューデリーを訪れ、公共政策策定に向けた社会福祉の測定の重要性に関するパネルに参加し、コスタリカの社会福祉政策について述べたほか、アンサリ副大統領と会談し、投資や経済協力の促進に向け協定締結の交渉を進めるべく会談を行った。 - 競争力指数ランクアップに向け、海外から専門家の支援(10/16)
政府は国の競争力を測定する世銀のDoing Businessランキングでのランクアップに向け、米州開発銀行の協力のもと、ギジェルモ・プラタ元コロンビア通商産業観光大臣の協力を得ることを決めた。チンチージャ大統領はアンティジョン経済大臣らとともにギジェルモ氏と会合を持ち、今後の方針について話し合った。 - 2013年Doing Businessランキングで12ランクアップ(10/23)
世界銀行が毎年発表するDoing Businessランキングにおいて、コスタリカは前年より12ランク順位を上げ、185カ国中110位となった。融資獲得、建設許可取得等の分野で10ランク以上の改善。今後は100位以内を目指す。 - 産業界の66%が対コロンビアFTAに反対、工業会議所調べ(10/24)
コスタリカ工業会議所の調査によると、現在交渉中の対コロンビアFTAについて66%のコスタリカ企業が否定的立場をとっていることが明らかになった。競争的な産業の多いコロンビアとのFTAにより、特に中小企業が打撃を受けるとされる。一方、交渉団長を務めるオカンポ貿易省次官は、コロンビアの輸出品目の7割は石油・鉱物関連であり、コスタリカの産業とは競合しないとしている。 - フロリダ・アイス・アンド・ファーム社、米国ビール製造企業を約4億ドルで買収(10/27)
ビールや飲料の販売・輸入・輸出の国内大手企業であるフロリダ・アイス・ファーム社は、米国のビール製造会社ノース・アメリカン・ブルワリーズ・ホールディング社を3億38百万ドルで買収することで合意した。同社はフロリダ社が製造する国産ビール「インペリアル」ブランドの米国販売会社で、米国内でも10ブランドのビールを製造している。 - 国立銀行の金利高傾向への大統領懸念を受け、国立銀行は金利高の原因究明へ(10/30)
26日、チンチージャ大統領は、国立銀行の貸出金利が民間銀行より高い傾向が続いていることへの懸念を表明したことに関連し、政府は国立銀行4行と会合を持ち、国立銀行に対し金利高の原因究明を行うよう要請した。
(1) La Nación紙, La República紙、La Prensa Libre紙
(2) 国内金融機関、中銀、財務省による資金調達金利(150~210日)の平均
(3)IMF(2000)によると、外貨準備保有高として輸入額の3カ月分は必要と指摘されている。