コスタリカ経済 定期報告(2012年12月)
※出典:中銀発表月次資料(11月又は12月分までの経済数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
1 経済活動指標
- 11月の経済活動指標の前年同期比成長率は、前月をさらに下回り2.49%となった。
- 前月比で低下が続いていた製造業の成長率が、わずかに持ち直したものの1.80%に留まったほか、製造業の減少に伴う輸出の減少が影響し運輸・倉庫・通信業は▲0.34%となった。
- その他の業種については、2006年1月以降2ケタ成長を続けてきた企業向けサービス業が前月に引き続き10%を下回る成長率となったものの、全体としてはいずれの業種も大きな変化はなく概ね安定的に推移している。


2 貿易
- 12月までの累積貿易額は、輸入が前年同期比8.2%増の17,549百万ドル、輸出が同比9.3%増の11,381百万ドル、貿易赤字額は同比6.6%増の▲6,169百万ドルとなった。
- 12月単月では、輸出額の前年同月比が▲1.7%となり、2011年1月以来のマイナス成長となった。これは、製造業部門の成長率減少に加え、バナナの生産高減少に伴う輸出高の減少が主たる要因であるが、コロン高による輸出への影響が顕在化しつつある可能性も否定できない。



3 財政収支
- 11月までの中央政府の財政収支は、歳入が前年同期比9.2%増、歳出が同比10.5%増で、財政赤字の対GDP比率は前年を0.2ポイント上回る▲4.0%となった。
- 政府は引き続き徴税強化に努め一般支出を抑制しているが、一方で現政権の公約等による公共投資が具体化しつつあり、これが歳出の増加率を押し上げている。
- 歳出については、2011年には前年比▲15.6%であった資本投資が回復し、前年比16%増となったことが主たる増加要因であるほか、インフラ整備を目的とした公的機関への資本移転も増加の一因となっている。

4 物価上昇率
- 12月の物価上昇率は0.28%となり、過去10年間での当月の数値としては2008年の▲0.42%に続く低い値となった。この結果、累積での物価上昇率は4.55%となり、中銀の目標値である4~6%以内となった。
- 上昇率が抑制された主たる要因はガソリン価格が▲9.18%となったことで、13.2%増であった前月と比べると大幅な価格低下となった。一方、都市部のバス料金及び水道料金はいずれも4%台の増加となっている。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 為替レートは引き続き為替バンド下限の1ドル500コロンで推移した後、12月最終週に一時的に1ドル511コロン台まで下落した。これは、この前週に中銀総裁が翌1月にも投機マネーの流入に歯止めをかける策を実施する可能性がある旨発表したことによる影響とされるが、専門家の間では引き続き直接投資等により外貨流入は続くとする見方が高く、再びバンド下限近辺に戻ると見られている。

(2) 金利
- 12月の基本預金金利(TBP)(2)は、9.5%で推移し、26日以降は新算出方法(3)の適用も寄与し、9.2%に低下した。TBPが下落傾向にあることによる市中金利への影響も見え始め、工業向けコロン建て貸付金利では、特に民間銀行で下落が見られており、専門家の間では、今後さらに下落するとの見方が強い。


6 外貨準備高
- コロン高傾向に歯止めがかからず、中銀は前月の217百万ドルを上回る475百万ドルのドル買い介入を行った。介入を行わなければ1ドル450コロンまで上昇するとの見方もあり、一部では現状の為替バンド制から変動相場制への移行の可能性が指摘されている。

7 主な出来事(12月)
(1)国内経済
ア 財政関連
- 財務省、2012年の政府財政赤字は対GDP比4.5%を下回るとの見込みを発表(12/12)
11日、アジャレス財務大臣は2012年の財政赤字は、徴税強化と支出圧縮の努力により対GDP比4.5%を下回るとの見込みを発表。11月末時点での赤字額は9,070億コロン(約18億ドル)、対GDP比4%でまだ幾分の余地がある。次年も2012年同様の赤字水準で推移するとの見込み。 - 中央銀行、市場金利を決める基礎となる基本預金金利(TBP)の算出方法を変更(12/26)
金利高抑制対策の一環として、中銀は、市中金利の基礎となる基本預金金利の算出方法を変更。新方法では、極端な高値や低値といった異常値を除外するほか、端数処理方法について0.25ポイント毎から0.05ポイント毎に改める。例えば、8.16%はこれまでであれば8.25%とされたが、今後は8.15%となる。
(2) 対外経済
ア 対外直接投資
- サービス産業への投資活発化(12/3)
2012年上半期の海外直接投資は、サービス業が4億42百万ドル、製造業が1億94百万ドルと初めてサービス業が製造業を上回り、コスタリカはサービス産業の拠点としての地位を固めつつある。2000年には5社にすぎなかったサービス業での外資企業は現在100社を超え、15万人の雇用を生んでいる。一方、近年の急激な増加による関連分野での人的資源不足も指摘されている。 - 顧客サービス提供の米国コンバージス社、コスタリカでの事業所拡張(12/6)
顧客サービス事業を行う米国大手のコンバージス社は、国内4番目となるサービスセンターを開設し新たに500名を雇用する。同社は30年以上同事業に従事し、全世界に75,000人の従業員を抱える。2009年にコスタリカに最初の事業所を設立して以来、今回の投資で4つめのサービスセンター設立となり、雇用は計2,000名となる。 - ハイテク分野への海外直接投資、過去最高を記録(12/13)
コスタリカ投資促進機構(CINDE)の発表によると、2012年のハイテク分野での海外直接投資額は5億7,450万ドルに達し、前年を22%上回る見込み。再投資を含む投資件数は40件で、8,236の雇用を創出している。ハイテク分野での投資は、サービス、医療科学、先端製造、クリーンテクノロジー等があり、サービス分野での投資案件が19件、医療科学が13件,先端製造が3件となっている。
イ FTA・経済協定等
- 欧州議会、中米・EU連携協定を承認(12/11)
11日、欧州議会は中米・EU連携協定を承認した。これにより、発効に向け中米側各国の議会批准を待つのみとなった。現在、中米側で議会批准が終了しているのはグアテマラのみ。中米各国の中でコスタリカはEU向け輸出が最も多いほか、対EU貿易収支は黒字となっており、2000年には18億39百万ドルであった貿易量は2011年には31億13百万ドルまで増加、現在547の輸出業者が806の商品を輸出している。 - 食料加工業会議所、FTAの見直しを要請(12/14)
食料加工業会議所(CASIA)を中心とした一部民間セクターは、輸入増加を懸念し、近い将来発効の可能性があるFTA(シンガポール、欧州自由貿易連合、EU、メキシコ近代化)について、慎重な検討を要請した。エルナンド同会議所会頭は、関税撤廃による開放政策は、国の競争力強化を伴う形で行われていないと述べた。 - 欧州自由貿易連合(EFTA)とのFTA交渉終了(12/17)
17日、グアテマラで実施されていた中米各国・EFTA(ノルウェー、リヒテンシュタイン、スイス、アイスランド)間のFTA交渉において、コスタリカは他国に先立ちEFTAとの交渉を終えた。パナマ、グアテマラ、ホンジュラスは引き続き次週も交渉を行う。ゴンサレス貿易大臣は、本協定はコスタリカの対欧州戦略を補うもので、1人あたりGDPが4万ドルを超える市場へのアクセスを手にした、と述べた。 - シンガポール、メキシコ(近代化)とのFTA、国会第1次審議で承認(12/20)
20日、シンガポールとのFTA締結及び対メキシコFTAの近代化の2案件が国会の第1次審議を通過した。サービス産業を主とした経済構造を持つシンガポールとの協定締結は、研究開発等の情報交換という面でも有意義とされており、同国との貿易は2000年の50.6百万ドルから2011年には69.7百万ドルに増加している。
ウ その他
- 電力販売枠入札実施、民間による風力発電の料金は国営の3分の1(12/6)
コスタリカ電力公社(ICE)により140MW分(風力100MW、水力40MW)の民間向け電力枠への入札が実施され、11社の入札の中から5社が落札した。風力は1KW時あたり0.083ドルで、国立配電公社(CNFL)が今月運用を開始した風力発電所での0.22ドル/KW時を大きく下回った。また、水力については、国営が0.119ドル/KW時に対し、民間は0.102ドルとほぼ同様の値となった。
(1) La Nación紙, La República紙、La Prensa Libre紙
(2) 国内金融機関、中銀、財務省による資金調達金利(150~210日)の平均
(3) 後述「7主な出来事(1)国内経済」第2項参照
(2) 国内金融機関、中銀、財務省による資金調達金利(150~210日)の平均
(3) 後述「7主な出来事(1)国内経済」第2項参照