コスタリカ経済 定期報告(2012年1~3月)
※ 出典:中銀発表月次資料、観光庁
1 経済活動指標
- 2012年第1四半期は、2011年11月からの製造業の回復がさらに加速したことが牽引力となって、各月7%台の成長となった。
- 製造業の伸びは、主としてフリーゾーンでの生産回復によるが、一方で建設業向けプラスチック製品、段ボール等のパッケージ製品などによる伸びも見られ、米国を中心とする外需だけでなく、内需の拡大傾向が見られる。
- 農業は、天候条件等により、非伝統農産品のメロン、パイナップルが好調である一方で、バナナが低調となっている。


2 貿易
- 1~3月の累積貿易額は、輸入が4,377.6百万ドル(前年比18.3%)、輸出が2,966.6百万ドル(前年比13.4%)で、1,411百万ドルの赤字となった。
- 輸入の増加については、1月に前年比で21.9%増となったことが寄与しており、これは石油輸入高の増加(前年比34.3%増)が主たる要因であるが、これに加えて一般消費財(乗用車、食料品等)の輸入増や建設業・国内製造業向けの資材輸入の増も要因として上げられ、内需の拡大を示している。
- 輸出の増加は、フリーゾーンからの電子機器等の輸出回復(3月の前年比成長率23.9%)増が主たる要因であるが、通常レジームからの輸出も8.6%の増加となったほか、コーヒー、ガラス製品等も順調に推移している。




※特別レジーム:フリーゾーン及び特別ドローバック制度
3 財政状況
- 3月の中央政府の財政赤字は対GDP比1.4%となり、前年同期(1.5%)をわずかに下回った。歳入が12.7%増となった一方、歳出は8.6%増と、歳入の増加率を下回った。
- 歳入増の主たる要因は輸入増に伴う関税の増加(前年比22.7%増)で、これは特に新車輸入が好調であることに起因する。また、所得税も17.5%増となった。


4 物価上昇率
- 3月までの物価上昇率(年間換算)は4.21と、年間目標値以内で推移している。3月までの累積値は0.86で、前年同期より0.49ポイント低い値となった。1~3月の物価上昇率の主たる要因は、教育費の上昇(0.44ポイント)、住宅賃借料・住宅関連サービス(0.20ポイント)、外食費(0.15ポイント)であった。


5 為替・金利
- (1)為替レート
1~2月にかけ、下限バンドより2~3%前後高値の511~512円前後で推移した後、3月にはコロン高傾向となり、3月の月末値は1ドル507.38コロンとなった。 - (2)金利
政府財政赤字の影響及び民間需要の増加により金利は上昇傾向にあり、基本預金金利 は2009年10月以来初めて9.25%に達した。金利上昇傾向は特にコロン建て金利において著しいが、ドル建て金利は10%前後で安定的に推移している。



6 外貨準備高
- 3月末時の外貨準備高は、4,745.4百万ドルとなった。これは輸入高の4.3倍にあたり、十分な準備高を備えているといえる。

7 観光動向
- 第1四半期の入込数は各月で前年を上回り、累計で740,701人、前年比8%増となった。
- 出国地別では、米国の景気回復を受けて北米からの渡航者が9.3%増の378,383人となった一方で、欧州からの渡航者は1.4%減の93,417人となった。


8 主な出来事(1~3月)
(1)国内経済
ア 財政関連
- スタンダード&プアーズ社、財政赤字による格付けダウンを警告(2/14)
S&P社は当国の長期ソブリン債格付け(外貨建て)をBBのままとし、コロン建てについてはBB+からBBへと変更した。同社は、この変更は評価方法の変更によるもので、評価ダウンではないとしている。S&P社によると、財政改善の見通しは見えないものの、経済成長はよいリズムを保っており、短期的な見通しに変化はないとしている。 - 2011年の公的債務残高、対GDP比44.7%に達した旨中銀が発表(3/7)
中銀によると、公的債務残高は3年連続で増加。主として対内債務の増によるもので、対外債務はGDP比10.7%。また、中央政府による債務はGDP比30.8%を占める。 - 本年中に5億ドルの海外向け国債発行を準備(3/20)
エレロ財務大臣は、国際金利水準の低さを利点に今年中に5億ドルの海外向け国債の発行準備を行うと発表。国会では、5年から30年の償還期間で総額20億ドルまでの外国起債を可能にする法案を審議中で、同法案は2月14日に国会経済委員会にて全会一致で承認されている。
イ その他
- 民間企業、チンチージャ政権にさらなる支援を要請(2/23)
民間企業部門商工会議所(UCCAEP)はチンチージャ大統領に対し、長期的成長に向けたビジョンを提出し、マクロ経済政策をはじめとした明確な政策の不在を訴え、政府の迅速な対応、さらなる支援を要請。 - エキスポモビル開催、23の代理店と5つの銀行の参加により開催(3/1~3/11)
3月1日~11日、大規模な乗用車の展示販売「エキスポモビル」が実施され、参加した代理店のうち11社の売上合計は合計6千台となった。
(2) 対外経済
FTA・経済協定等
- コロンビアとのFTA交渉の推進を貿易省が発表(1/18)
ゴンサレス貿易大臣は、第1四半期にもFTA交渉について検討すると発表。食料加工業をはじめ製造業界からは、本FTAは補完的ではなく競争的であるとして懸念の声があがっている。 - 欧州自由貿易連合とのFTA交渉を開始(2/28)
28日、ジュネーブにおいて欧州自由貿易連合(EFTA:スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)中米諸国(コスタリカ、グアテマラ、ホンジュラス、パナマ)との間のFTA交渉第一ラウンドが開始。欧州市場へのアクセス拡大に向け、中米・EU連携協定を補完する狙い。 - コスタリカとのFTA、ペルーが国会承認(3/27)
同FTAは2011年に署名され、コスタリカでは同年6月に国会提出、国会外交委員会で分析中。ゴンサレス貿易大臣は、同FTAにより中小企業にもペルー市場への参画のチャンスが生まれると述べている。