コスタリカ経済 定期報告(2013年1月)
※出典:中銀発表月次資料(12月又は1月分までの経済数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
1 経済活動指標
- 12月の経済活動指標の前年同期比成長率は前月同様3.0%となり、2012年3月以降の成長率減退の傾向は止まりつつある。
- この主たる要因は、経済活動の主要な部分を占める製造業が4カ月ぶりに2%台の成長となったことで、これはフリーゾーンでの電子部品関連の回復によるものである。
- 運輸・倉庫・通信業は0.91%と前年同期(7.7%)と比較し著しく低下した。


2 貿易
- 1月の貿易額は、輸入が前年同期比▲0.5%の1,465.8百万ドル、輸出が同比▲1.1%の872百万ドル、貿易赤字額は前年とほぼ同額の▲593.8百万ドルとなった。
- 前年1月には、経済危機からの回復傾向としてフリーゾーンでの伸びが顕著であり、輸入・輸出とも前年比約20%の成長率となっていたが、この傾向はひと段落したと見られている。本年は、輸出においては、特に農産物においてコロン高傾向の影響を受ける可能性があるほか、中米地域で発生している「さび病」によるコーヒー生産高の減少が予測されており、これらマイナス要因を製造業の伸びがどこまでカバーできるかが注目される。



3 財政収支
- 12月までの中央政府の財政収支は、歳入が前年同期比8.3%増、歳出が同比10.2%増で、財政赤字の対GDP比率は前年を0.3ポイント上回る▲4.4% となった。これは、年初の予想値であった▲4.8%を下回っている。
- 歳入については、11月まで前年比約10~12%の増加を続けてきたが、所得税の前年比増加率(7.7%)が前月までの累積額前年比増加率(11.6%)と比較して低下したことを主要因として、8.6%増に留まった。特に、金利高やコロン高による企業の収益性低下が懸念されている。

4 物価上昇率
- 1月の物価上昇率は、前年値の0.17%を1.24ポイント上回る1.31%となった。年間換算値は5.74%で、2013年の中銀目標値である4~6%内に辛うじて収まったが、2009年以降最も高い数値となった。
- 主たる上昇要因は、住宅賃貸料・住宅関連サービスで、電気・水道料金の規制料金値上げが影響し4.55%の上昇となった。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 為替レートは、1月第2週にバンド下限に再び貼り付き、中銀は1月7日~17日にかけ計243百万ドルのドル買い介入を実施した。その後、1月15日に政府が投機マネー流入対策案([2])を(2)発表したことを主たる要因として若干のコロン安となり、1ドル503コロンで1月を終えた。

(2) 金利
- 1月の基本預金金利(TBP)(3)は、9.2%でスタートし、その後週ごとに低下し、月末には8.3%と前年1月当初の8.0%の水準まで近づいた。市中金利においても、金利高が懸念されていた国立銀行のコロン建て金利で下落が見られる。


6 外貨準備高
- 引き続き行われたドル買い介入により、外貨準備高7,084百万ドルに達した。1月15日に政府が投機マネー流入対策案を発表したことを主要因として、18日以降、為替レートは1ドル502~503コロンで推移しており、追加的ドル買い介入は行われていない。
- 外貨準備高の急増により、市中のコロン通貨が供給過剰を起こしインフレ圧力となりうるため、2013年に向けた中銀の経済政策に注目が集まっている。

7 海外送金
- 中米においては、外国への移民者(主に米国)からの本国への送金が重要な外貨獲得手段となっており、多国間投資基金(MIF)(4)によると2011年の中米諸国(5)向け海外送金は13,171百万ドルに達した。うちコスタリカは530百万ドルで、域内ではベリーズに次いで少なく、域内で最も多いグアテマラ(4,377百万ドル)の8分の1程度である。コスタリカにおいては、海外からの送金を受け取っている家庭は全家庭の3.4%に過ぎず、受取総額はGDP比1.2%に留まり、外貨獲得手段としての重要性は大きくない。
- コスタリカは、海外送金の受取国であると同時に送出国でもあり、世界銀行等の調査(6))によると、2011年は、受取が前年比5.7%の減である一方、送金は前年比13.7%の増となっている。コスタリカへの送金の送り元国は69.7%が米国(2010年中銀調べ)、コスタリカからの送金の受取国は75.5%がニカラグア、次いで7.6%がコロンビアとなっている。
8 主な出来事(1月)
(1)国内経済
ア 財政関連
- 2012年の政府財政赤字は対GDP比4.4%(1/18)
財務省は2012年末時点での財政赤字額を発表、1,003,098百万コロン(約2,006百万ドル)で対GDP比は前年より0.3ポイント高い4.4%となったが、2012年初の予想値であった4.8%は下回った。予想値を下回った要因は支出の抑制にある。一方、徴税による歳入の増加率は鈍化しており、2011年には前年比11.1%であったものが2012年は8.6%に留まった。2013年の対GDP比財政赤字は4.9%に達する見込み。 - 財務省、新財政改革案を検討中(1/28)
アジャレス財務大臣は、財政赤字対GDP比1%の改善を目指す新財政改革法案「財政強化」(Consolidación Fiscal)を準備中で、政権交代となる2014年5月より前の承認も視野にいれ本年第2四半期にも国会に提出したい考えを示した。新案には、付加価値税の導入、所得税の累進性強化課税制度改革、公務員給与の見直しが含まれ、増税とともに政府支出の見直しが織り込まれる。
イ コロン高・投機マネー流入
- ドル流入により経済の安定性に陰り(1/14)
前年より続いているドルの大量流入により、コロン高による輸入産業への影響が懸念されているが、これに加え、相次ぐ中銀のドル買い介入によりインフレ懸念も生じている。過剰な通貨供給を国債発行で吸収するには高金利設定が必要となり、結果として海外からの投資流入を招くことになる。専門家の間では為替制度の見直しが必要であるとする見方も出ている。 - 政府は投機マネー対策案を発表(1/15)
政府は、複数案からなる投機マネー対策案を発表。金利低下を目的とし、国立銀行に対し投資家に支払う利率に上限を設けることを要請する指針に大統領が署名したほか、投資利益に対する課税を一時的に引き上げる権限を中央銀行に付与する法案も国会に提出される。一部専門家からは、投機マネーとその他の投資との判別は容易でない点を指摘する声も挙がっている。 - 中央銀行、2013-14マクロ経済政策を発表(1/31)
中央銀行は、2013-14のマクロ経済政策を発表。インフレ目標値は前年同様の5%(±1%)とするほか、ドルの過剰流入による融資バブル化を防ぐため、各金融機関の融資増加率に上限を設けることを発表。前年末からの投機マネー流入増により、各金融機関ではドル建てを中心に融資が急増しており、これが過熱することを抑制する狙い。また、政府から金融機関への働きかけによる金利高傾向の抑制や、追加的課税による海外からの投機マネー流入抑制などにより流動性をコントロールすることを基本とし、変動相場制への移行は短期的には行わないとしている。
ウ その他
- コーヒー生産高、さび病の影響で10%減(1/7)
2012-2013年のコーヒー収穫高は、中米地域一帯に広がっている「さび病」の影響を受け9.8%の減少となった。収穫高の減少はコーヒーの国際価格の低迷と共に不安材料となっている。コスタリカコーヒー協会のピータース理事長によると、農牧省は次期収穫に向け予防策を講じるために委員会を既に設け対策を講じている。 - 貿易省、IDBの融資により国境税関施設の改善に着手(1/7)
貿易省は、米州開発銀行(IDB)より8千万ドルの融資を受け、ペニャス・ブランカス(Peñas Blancas,ニカラグアとの国境)、パソ・カノアス(Paso Canoas, パナマとの国境)、シサオラ(Sixaola,パナマとの国境)、ラス・タブリジャス(Las Tablillas,ニカラグアとの国境))の4か所の国境税関施設改善を実施する旨発表。ペニャス・ブランカスとパソ・カノアスでは、これまでに実施された改善計画により、明らかな迅速化効果が表れており、民間セクターからは好意的に受け止められている。 - 輸出会議所、輸出先・品目の多様化の必要性主張(1/14)
2012年の輸出高は前年比で8.9%成長となったが、セグニーニ輸出会議所会頭は欧州と米国の景気回復スピードの遅さに鑑み、輸出品目および輸出先国の多様化を進める必要があると述べた。現在、145カ国に4千品目を輸出しているが、品目の多くは少数企業に集中している。一方、工業会議所は、FTA締結が必ずしも輸出先の多様化につながっていない点を指摘している。 - 民間企業の収益低下傾向(1/24)
財務省発表数値によると、2012年の民間企業の収益は前年比で10%の低下。民間コンサルタント会社の調査によると、国内企業のうち、対前年で収益が増加した企業は38%に留まる。財政赤字に起因する国内調達金利高、コロン高による輸出不振に加え、電気料金高や手続きコスト高等が原因として挙がっている。
(2) 対外経済
- ゴンサレス大臣のWTO事務局長選を公益事業化(1/15)
チンチージャ大統領は、ゴンサレス貿易大臣の次期WTO事務局長立候補に関する選挙活動を「公共の関心事項」とする大統領令を発出。前年12月18日に大統領が署名し、1月11日付で官報にて公示されたもので、各公的機関に対し人的・経済的資源等の投入により選挙活動を支援することを要請するもの。
(1) La Nación紙, La República紙、La Prensa Libre紙
(2))7項(1)イ参照
(3)国内金融機関、中銀、財務省による資金調達金利(150~210日)の平均
(4)多国間投資基金(Multirateral Investment Fund/ www.fomin.org) (2012), “Remittances to Latin America and the Carribean in 2011”.
(5)ベリーズ(107百万ドル)、グアテマラ(4,377百万ドル)、エルサルバドル(3,650百万ドル)、ホンジュラス(2,862百万ドル)、ニカラグア(1,053百万ドル)、コスタリカ(530百万ドル)、パナマ(592百万ドル)
(6)CEMLA(ラテンアメリカ金融研究センター)、米州開発銀行、世界銀行(2012年11月) “Programa de Aplicación de los Principios Generales Para Los Mercados de Remesas de América Latina y el Caribe
(2))7項(1)イ参照
(3)国内金融機関、中銀、財務省による資金調達金利(150~210日)の平均
(4)多国間投資基金(Multirateral Investment Fund/ www.fomin.org) (2012), “Remittances to Latin America and the Carribean in 2011”.
(5)ベリーズ(107百万ドル)、グアテマラ(4,377百万ドル)、エルサルバドル(3,650百万ドル)、ホンジュラス(2,862百万ドル)、ニカラグア(1,053百万ドル)、コスタリカ(530百万ドル)、パナマ(592百万ドル)
(6)CEMLA(ラテンアメリカ金融研究センター)、米州開発銀行、世界銀行(2012年11月) “Programa de Aplicación de los Principios Generales Para Los Mercados de Remesas de América Latina y el Caribe