コスタリカ経済 定期報告(2013年2月)
※出典:中銀発表月次資料(1月又は2月分までの経済数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
1 経済活動指標
- 1月の経済活動指標の前年同期比成長率は前月と同水準の3.27%となり、2012年10月以降同様の水準を維持している。
- 製造業が緩やかに回復する一方で、2006年以降2ケタ成長を続け、近年は成長を牽引していた企業向けサービス業の成長率が、2012年第2四半期より下降傾向となり、2013年1月には6.33%にまで減少している。


2 貿易
- 2月の貿易額は、輸入が前年同期比0.9増の1,465.8百万ドル、輸出が同比7.3%の872百万ドル、累積貿易赤字額は前年より2.6%増加し▲320.7百万ドルとなった。
- 輸出においては、過去12カ月間でフリーゾーン等の特別措置レジームからの輸出が10.4%増であったのに対し、一般レジームは2.6%増に留まった。輸出主要輸出品目はマクロプロセッサー用電子部品を筆頭に、パイナップル、バナナ、医療機器、コーヒーとなっている。



3 財政収支
- 2月までの中央政府の財政収支は、歳入が前年同期比17.2%増、歳出が同比14.3%増で、財政赤字の対GDP比率は前年同様の▲1.2% となった。
- 歳入の増加の主たる要因は、ガソリン税及びたばこ税の増加、2012年4月より課税がスタートした法人登録税の納税時期が本年より1月になったことによる。一方、輸入にかかる税収が前年同月比で1.4%減(前年9.3%増)となったほか、売上税も2.9%の増加に留まっており(前年15.2%増)、内需停滞が懸念される。
- 支出においては、給与や経常移転で抑制傾向が続いているが、前年同期比で約30%増となった金利支払いや、同比55%増となった公共投資(道路投資等)により、前年同期の成長率(12.5%)を上回った。

4 物価上昇率
- 2月の物価上昇率は1.02%となり前月を0.29ポイント下回ったが、年間換算値では6.52%となり、2010年11月以来、中銀のインフレ目標値である4~6%を上回った。
- 主たる上昇要因は、教育費(初等・中等教育)の上昇(4.18%)、交通関連費の上昇(1.54%、主としてガソリン価格上昇による)、食料品価格の上昇(1.45%、主としてトマト、ジャガイモ)である。
- 2012年下半期より、水道、電気や公共サービスなど、価格規制のある品目を中心に価格上昇が見られ、これが物価上昇率に影響を与えている。この傾向について中銀は懸念を表しているが、当面はインフレ目標値の変更は行わず、動向を見守る構え。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 為替レートは1ドル500~503コロンで推移し、2月の中銀によるドル買い介入は前月の243百万ドルを大きく下回る13百万ドルに留まった。
- 政府が1月に投機マネー規制法案を発表したことにより、投機マネーの流入加速に伴うコロン高傾向には一端ブレーキがかかったとも見られるが、短期的にコロン安に傾く見込みは小さく、当面1ドル500コロンに近い位置での変動が予測される。

(2) 金利
- 1月の基本預金金利(TBP)(2)は、引き続き下降傾向を続け、2011年12月22日以来の低値である7.35%で2月を終えた。これは、政府の国債発行による資金調達が減速していることの効果と見られている。
- 専門家の間では、政府財政赤字による資金調達の必要性と、ドル買い介入によるコロンの過剰供給を吸収するための国債発行の必要性が続く見込みである間は、TBPが7%を下回って低下する可能性は低いとみられている。


6 外貨準備高
- 2月末時点での外貨準備高は前月比で1.0%増の6,816.3百万ドルとなった。前年からの中銀による相次ぐドル買い為替介入を主たる要因とした外貨準備高の拡大傾向はしばらく続くものと見られている。

7 主な出来事(2月)
(1)国内経済
ア 財政関連
- 政府の新財政対策、国会提出まで1年はかかる見込み(2/5)
4日、アジャレス財務大臣は、新財政強化策は、国会に提出されるまでに3つの段階を経ることになり、計約1年かかる見込みである旨発表した。第1段階では、専門家と共に過去の改革案等も含め分析を行い、5~6月頃までに報告書をまとめる。これをもとに、第2段階として国内関係セクターとの検討を行う。その後、2014年2月の国会提出を目指し法案を策定する。 - 財政赤字対策の公務員給与カット案、労働者との間で摩擦(2/6)
政府財政の圧迫要因の1つである公務員給与上昇を管理するという政府案が、組合との間で摩擦を生んでいる。財務省側は同案について同月中に各セクターに問い合わせた後に国会に提出するとしているが、組合側は、公務員給与のうち中程度~低収入層には財政赤字の責任を負う義務はないとして反対の構え。 - 財務省、GDP算出方法の見直しに着手(2/15)
財務省は中央銀行の依頼を受け、現状の算出方法では、経済情勢の変化を反映していないとされるGDPの算出方法の見直しに25年ぶりに着手する。1300の企業に調査を実施し、生産性の構造の見直しを図る。新方法は2015年にも準備が整う予定。
イ FDI
- P&G新物流センター開設で500人を新規雇用(2/5)
P&Gは、ラテンアメリカ地域をカバーする物流センターの開設に5~6百万ドルを投資し、工業エンジニア等500人を新規雇用する旨発表した。P&Gは1999年よりコスタリカでサービスセンターを操業しており、現在1300名を雇用している。 - 殺菌消毒サービス大手のステリジェニックス社(米)、工場操業開始(2/7)
殺菌消毒サービス大手のステリジェニックス社はアラフエラに新規工場の操業を開始した。9.5百万ドルの投資で、1年以内に6百万ドルを再投資する。同社は医療機器や食料品の滅菌処理等を行っており、世界38か所に工場を保有している。
ウ その他
- トヨタ、乗用車登録台数で国内首位を奪回(2/4)
2012年の乗用車登録台数によると、トヨタが12,875台(中古車含む)を記録し、11,125台の現代自動車を抜いて再び首位に返り咲いた。コスタリカへの輸入乗用車(中古車含む)のうち、トヨタ製乗用車は28%を占め、昨年よりも比率を挙げている。トヨタ自動車販売代理店のプルディ社によると、2012年の売上は前年比40%増となっており、本年の目標値は15%増。2011年の減少は3月に起きた大震災の影響によるもので、トヨタ車の売上はコスタリカのみならず世界的にも回復している。 - 金融機関監督庁、ドル建て貸付時の審査強化を要請(2/6)
国家金融システム委員会は、昨日、金融機関監督庁を含む4監督庁とともに、金融バブル化を回避し為替リスクを抑えることを目的に、ドル建て融資を実施する際の審査強化策について発表した。融資実施の際に借り手の返済能力(特にドル建てでの返済能力)等についての審査を厳格化することなどが含まれる。 - 国内コーヒー農家の64%に「さび病」の被害(2/20)
中米全域に被害の出ている「さび病」について、コーヒー協会及び農牧省は、国内のコーヒー農家のうち26.3%が深刻な被害を受け、48%が何らかの被害を受けているという調査結果を発表。コスタリカではコーヒー農家の91.6%は中小規模農家であり、さび病による影響が心配されている。政府は救援策として20億コロン(約4百万ドル)を投入する計画。 - 労働市場で不利を被る女性(2/22)
商業会議所の調べによると、女性が企業トップを占める割合は3%に過ぎず、男女が同等の業務に就いた場合、女性は男性より7.9%賃金が少ないことが明らかになった。家族内での女性に求められる役割に対するプレッシャーや、教育不足が原因と見られる。中小企業では状況は幾分改善され、37%の企業で女性がトップを占める。 - ICE(電力通信公社)が6社の民間企業による再生エネルギー発電の購入の同意書に署名(2/22)
21日、ICEは民間6社による発電電力を購入する同意書に署名した。現状の法律では、国全体の発電量の30%にあたる735MWまで民間が発電することが認められている。現状の512MWに今回の6社による140MWが加わるが、ICE側は残る約70MWについても今後3カ月以内に入札を実施する意向。 - エキスポモビル開催場所、開始1日前に手続き不履行を理由にベレン市当局により閉鎖(2/24)
23日から開催予定だった乗用車の大型展示フェア「エキスポモビル」は、会場を運営するPedregal社が一部の建設物に必要な手続きを満たしていないとして、開始前日になってベレン市当局により閉鎖された。各自動車販売店は自社施設にて同フェアと同様の条件で販売を行う。閉鎖による損害総額は1千万ドルとの見積もりも。 - モイン港、カルデラ港をはじめとした港湾設備改修工事に着工(2/26)
国際的競争力の低下を招く要因となっている港湾設備の不備を改善すべく、25日、プンタレーナス市カルデラ港改修の着工式が行われた。同計画には34百万ドルが投資され、135%の生産性向上となる見込み。同日、リモン市モイン港においても96百万ドルの投資による石油埠頭建設にもゴーサインが出された。コスタリカの港湾設備は、世界経済フォーラム競争力ランキングにおいて現在142カ国中134位にランクされており、早急な改善が求められていた。
(2) 対外経済
- 対コロンビアFTA交渉、第4ラウンドを開始(2/4)
製造業界からの反対の声が強い対コロンビアFTA交渉の第4ラウンドが4日スタートする。今回は、市場アクセスや原産地規則について交渉が行われる予定で、貿易省では本ラウンドを最終ラウンドとしたい考え。一方、製造業会議所をはじめとした民間セクターからは、競争力の高いコロンビア企業への懸念が高まっており、交渉の行方を注意深く見守る構え。 - 対コロンビアFTA、第4ラウンドを延長(2/8)
交渉中の対コロンビアFTAは、コスタリカ側の製造業界が一部品目の除外を求める中、当初予定の8日までに交渉がまとまらず、交渉は次週に持ち越しとなった。コロンビア側は当初より製造業については除外品目なしを求めており、交渉は難航している。コロンビア側は持ち帰った上で検討するための時間を要求しており、これを待って両国の閣僚が最終交渉を行う見込み。 - 対メキシコFTA近代化を国会が承認(2/26)
中米・メキシコFTAの近代化が国会の2次審議で承認された。本協定は2011年11月に署名されたもので、税関手続きの改善をはかり、投資やサービス、政府調達、知的財産等について近代化を図る。