コスタリカ経済 定期報告(2013年3月)
※出典:中銀発表月次資料(2月又は3月分までの経済数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
1 経済活動指標
- 2月の経済活動指標の前年同期比成長率は前月と同水準の3.59%となり、2012年10月以降同様の水準を維持している。
- 製造業の増加率が回復傾向にあり、前年比7.25%となっているが、これは主としてフリーゾーンにおける電子部品関連の製造の活発化による。一方、農業は下降傾向にあるが、この理由として農業会議所は、米国からの加工済み製品輸入の増加により、ジャガイモ、タマネギの耕作量が減少傾向にあることと、水道・電気・ガソリン料金等の値上がりを挙げている。


2 貿易
- 3月の貿易額は、輸出入ともに前年同月を下回り、輸入が前年同月比▲8.5%の1,447百万ドル、輸出が同比▲2.2%の1,096百万ドル、累積貿易赤字額は9.9%改善し、▲1,288百万ドルとなった。
- 輸出においては、電子部品関連が前年同月比で18.1%増加した一方、その他の産業の多くは前年同月比を下回った。特に、農産品は前年同月比▲21.0%、金属加工品が▲17.1%となっている。
- 地域別で見ると、北米向け輸出が前年同月比0.7%と前年同様の値を維持した一方、中米向け輸出は同比▲13.8%となった。うち、減少率が大きいものは、金属加工品(▲23.6%)、プラスチック製品(▲29.2%)であり、電子部品といったハイテク製造業以外での国内製造業の落ち込みが懸念される。



3 財政収支
- 3月までの中央政府の財政収支は、歳入が前年同期比10.1%増、歳出が同比11.1%増で、財政赤字の対GDP比率は前年同様の▲1.2% となった。
- 歳出においては、経常支出の増加率は、前年同期(12.2%)を下回る7.9%に留まったが、インフラ整備を目的とした国家道路審議会(CONAVI)への資本移転を主たる要因として、資本支出は77.1%の大幅増となった。
- 税収は前年比11.4%増と、前年同期の同値である12.9%よりも低い増加率となった。

4 物価上昇率
- 3月の物価上昇率は0.11%となり、高水準にあった1~2月を下回ったが、年間換算値では6.21%となり、前月に続きの中銀のインフレ目標値である4~6%を上回った。
- 主たる上昇要因は、教育費(初等・中等教育)の上昇(6.45%)、住居関連費の上昇(4.82%)である。
- 今後、電気料金やガソリン料金の値上げが予定されており、インフレ上昇圧力は続くものとの見方が強い。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 為替レートは再び1ドル500コロン付近に貼り付き、3月の中銀によるドル買い介入は前月の13百万ドルから290百万ドルまで再び上昇した。3月のコロン需要は年間のサイクルによるもので、税金支払い等の企業によるコロン建て支払いの増加が主原因である。しかし、国際市場から見ると国内金利は未だ高い水準にあるため、前年後半より課題となっている投機マネーの流入が食い止められたと見るには尚早である。

(2) 金利
- 預金金利(TBP)(2)は、急激な下降傾向には歯止めがかかったものの緩やかに下降を続け、3月末時点で2008年7月以来の6%台である6.95%となった。


6 外貨準備高
- 3月末時点での外貨準備高は6,936.8百万ドルとなった。コロン高傾向によるドル買い介入は続いており、市場においてコロン通貨が過剰となりインフレ圧力となることが懸念されている。

7 主な出来事(3月)
(1)国内経済
ア 財政
- 政府が受けた海外からの融資のうち72億ドルが未使用(3/13)
財務省は、道路整備や空港整備などのインフラ整備を目的として海外から調達した資金のうち72億ドルが未だ実行されていないことを明らかにした。主な資金調達先は、米州開発銀行と中米経済統合銀行。財務省は、コスタリカはラテンアメリカの中でも予算実行率が低く、予算実行に際し課題があるとしている。 - 政府、4~5月頃にユーロ債発行を検討(3/22)
アジャレス財務大臣は、4~5月頃に10億ドルのユーロ債発行の準備を進めていると発表した。昨年11月に10億ドルのユーロ債を発行して以来2度目となる予定。
イ FDI
- テルモ社傘下の脳血管治療用医療機器会社Microvention社、工場を開業(3/6)
脳動脈瘤のカテーテル(血管内手術)用医療器具などの開発から販売を手掛ける米Microvention社は、Coyolフリーゾーン内に6,600平米の新工場を8百万ドルの投資で建設し、操業を開始した。同工場は当初150の雇用を創出し、数年後には500名体制にする考え。米国外では初の工場となる。 - インド情報通信大手インフォシス社、サービスセンターを開設(3/11)
インドの情報通信大手インフォシス社は、P&G社の物流戦略を請け負うサービスセンターを開設し、100の雇用を創出する。同分野における世界的なリーディング企業による進出を祝い、同センターの操業式典にはチンチージャ大統領、クルス科学技術大臣、セグラ労働大臣、ゴンサレス貿易大臣が出席した。
ウ その他
- 12月の中古車輸入台数、7カ月連続で前年同月を下回る(3/4)
12月の中古車の輸入台数は7カ月連続でマイナス成長となり、6~12月の総輸入台数は15,308台となった(前年同期18,241台)。中古車輸入業者は2012年には、新交通法の施行に伴い中古車に関する関税措置に変更があったことが原因としている。財務省は、この措置は新車輸入を促進するためのものであるとしているほか、新車購入のための有利な融資等も増加しており、新車市場に追い風となっている。 - 「さび病」によるコーヒー農家への被害、雇用に影響(3/11)
農牧省は、昨今のさび病によるコーヒー生産への打撃により、2012~13年にかけ、約1万人が失業し、2013~14年にかけてはさらに拡大すると発表した。中米全域では2012~13年で43万7千人が職を失った。国際コーヒー機関は、各国のさび病対策を支援するとともに、国際社会に対し支援を求めている。 - 若年層の失業率、増加傾向(3/18)
2012年第3四半期の継続雇用調査(ECE:情勢の変化を見るため四半期ごとに行われる雇用調査。)によると、15~24歳の失業率は、全世代平均(約10%)の約2倍の23%となった。専門家によると、若年層は経験に乏しく、また中等教育を終えていないケースも多いため、就職率が低くなる傾向にあるとのことである。セグラ労働大臣は、若年層の就職率向上に向けた法案を検討中であると説明している。
(2) 対外経済
ア 自由貿易協定(FTA)関係
- 対シンガポールFTA、国会2次審議で承認(3/4)
2010年に交渉を終えて以来国会審議中であった対シンガポールFTAが、ようやく国会第2次審議で承認された。貿易省は、投資の活発化に加え、ハイテク分野に強いシンガポールからは得られるものも多く、また食料輸入の多い同国へは農業部門の輸出も期待できるとしている。 - 対コロンビアFTA交渉妥結(3/6)
6日、ゴンサレス貿易省は、ディアス・グラナドス・コロンビア商工観光大臣と会合を持ち、両国のFTA交渉妥結を公式に宣言した。同交渉では、コスタリカ側産業界からプラスチック等一部製造業の除外を求める声があり、交渉が難航していたが、最終的にはこれらの商品を除外とすることで決着した。本FTA締結により、コスタリカは太平洋同盟への加盟の準備が整う。今後は、5月23日にコロンビアで開催予定の太平洋同盟首脳会合にてチンチージャ大統領とサントス・コロンビア大統領が同協定に署名し、6月には国会提出される見込み。 - 対ペルーFTA、国会1次審議を通過(3/11)
2011年より国会提出されていた対ペルーFTAが国会第1次審議を通過した。コスタリカからは精肉、パーマ油、チョコレート等の輸出が期待され、ペルーからはアスパラガス、オリーブ、オレンジ等が無税で輸入される。ペルーは太平洋同盟における重要な加盟国。 - 中米・EU連携協定の批准の遅れに民間セクターより懸念の声(3/20)
5月15日に発効が予定されている中米・EU連携協定について、批准が同日に間に合わない可能性を懸念する声が民間セクターより挙がっている。同協定には、すでにホンジュラスとニカラグアが批准しており、発効日までにコスタリカ国会で批准が行われなかった場合、EU市場への進出に際しこれら2国に遅れをとることとなるため、農業輸出業界を中心に危惧が広がっている。
イ その他
- 篠原IMF副専務理事がコスタリカを来訪、財政金融政策の強化を期待(3/8)
篠原IMF副専務理事がコスタリカを訪問し、同国のマクロ経済情勢及び財政金融政策について、財政改善努力は認めつつも、早急な財政改革が必要との考えを示した。為替制度については、金融政策の幅をもたせるためにも、為替制度の柔軟化が必要とした。中銀及び財務省はこれに大筋同意しており、今後も時機を見ながら、政策に必要な修正を行っていくとしている。