コスタリカ経済 定期報告(2013年4月)
※出典:中銀発表月次資料(3月又は4月分までの経済数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
1 経済活動指標
- 3月の経済活動指標は、大きく落ち込んだセクターが見られなかったことと、商業及び運輸・倉庫・通信業が回復傾向となったことにより、前月を0.41ポイント上回る4.27%となった。
- 経済活動指標は2013年に入り緩やかに上昇傾向にあるものの、フリーゾーンを除いた指標を見ると回復は遅れているほか、成長を牽引していた企業向けサービスの下降傾向も続いている。
- 第2四半期以降の成長率の回復は、フリーゾーンでの製造業の伸びに依存するところが大きいと見られるが、米国の景気回復の兆しが見られる一方で欧州や日本は未だ停滞気味であり、これらの地域への輸出を主たるドライバとするフリーゾーンでの製造業が今後も成長傾向となるかは不透明である。


2 貿易
- 4月の貿易額は、輸出入とも前年同月比で増加に転じ、輸入が20.8%増の1,592百万ドル、輸出が3.4%増の983百万ドルとなった。1~4月の累積貿易赤字額は前年同期比で6.3%悪化し、▲1,911百万ドルであった。
- 輸出においては、フリーゾーン等の特別レジームからの輸出が10.7%増となった一方で、それ以外の分野では3.4%減となった。主たる減要因は農業部門で、コーヒー・バナナの国際価格下落傾向による影響が大きいが、農業会議所は、同セクターの国際競争力の低下を懸念している。



3 財政収支
- 4月までの中央政府の財政収支は、歳入が前年同期比12.4%増、歳出が同比14.3%増で、財政赤字の対GDP比率は前年を上回る▲1.75% となった。
- 歳出の増加は、高金利時に発行した国債の利払いにより金利支払いが増加(前年比22.4%増)したほか、資本支出も前年比79.7%と前月に続き高い増加率となったことが要因である。
- 税収は前年比12.4%増となったが、これは主としてガソリン税、たばこ税の増による。一方、売上や消費にかかる税収は、売上に関する税3.0%、消費に関する税(奢侈税等)▲10.8%となっており、需要の縮小が懸念される。これは、中古車を中心とした乗用車輸入の減少(第1四半期前年同期比▲23%)が主要因と見られている。

4 物価上昇率
- 4月の物価上昇率は0.73%となり、年間換算値では6.31%と前月を上回った。
- 主たる上昇要因は、電気料金の上昇(13.25%)、ガソリン料金の上昇(3.72%)で、引き続き、規制価格の上昇が原因となっている。
- 規制価格の上昇は継続的なものではないため、物価上昇率は今後低下するとの見方もあるが、介入を要する為替制度と、財政赤字とが、中銀の金融政策を限定的なものにしている点は否めない。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 為替レートは引き続き為替バンド下限で推移したが、ドル買い介入は前月の290百万ドルを大きく下回る54百万ドルとなり、安定的であった。
- 3月には企業の税金支払い等の季節要因によりドル需要が増加するが、4月には一転して需要が落ち着きを見せるのが通例だが、これに加え国内金利が落ち着きを見せたことにより海外投資家による投機マネーの流入も収まりつつあるとの見方が強い。

(2) 金利
- 基本預金金利(TBP)(2)はさらに0.20ポイント低下し、4月末には6.75%となった。これに伴い国立銀行の製造業向け貸付金利は民間銀行の16.30%を下回る16.09%となった。
- 物価上昇率が6.31%となっていることから、実質預金金利はゼロに近づいているが、国立銀行、民間銀行とも金利を引き上げる動きは現在のところ見られない。


6 外貨準備高
- 4月末時点での外貨準備高は6,967百万ドルとなった。これに加え、23日のユーロ債発行による10億ドルが5月1日には入金される予定となっているため、次月の外貨準備高はさらに増加する見込みである。

7 主な出来事(4月)
(1)国内経済
ア 財政
- 第1四半期の財政赤字対GDP比、前年同様の1.4%(4/13)
財務省は第1四半期の財政状況を発表。歳入が11.41%の増、歳出が11.09%の増で、財政赤字の対GDP比は前年同様の1.4%となった。アジャレス財務大臣は、財政に関する課題は依然残るものの、安定化しつつあるとし、新財政改革案を5~7月には発表するとしている。 - 前年11月に続き2度目となる10億ドルのユーロ債を発行(4/23)
23日、政府は10億ドルのユーロ債を発行したと発表。うち5億ドルが償還期限12年、金利4.375%で、残る5億ドルは償還期限30年、金利5.625%となった。前回発行時の償還期限は10年、金利は4.25%。今回調達する10億ドルのうち、4億ドルは海外債務の返済に、5億ドルは国内ドル建て債務の返済に充てられる見込み。
イ FDI
- 2012年のフリーゾーンへの海外からの直接投資、前年比21%の減少(4/4)
2012年の海外からの直接投資額が前年比で5%増となった一方で、フリーゾーンへの投資は前年比減の535百万ドルとなった。全投資のうち48%がフリーゾーン外への投資であり、通信事業、不動産開発、商業、観光等への投資となっている。フリーゾーンへの投資は、金額の上では減少しているが、新規案件は前年比で増加(2012年40件、前年34件)しており、工場建設等と比較すると投資額の小さいサービス業等の案件が増加しているためと見られている。 - メキシコの食料品大手Sigma社、乳製品大手のモンテベルデ社を買収(4/4)
2002年にコスタリカに進出したメキシコ資本のSigma社は、コスタリカのモンテベルデ社を買収すると発表した。これにより、同社の持つ牛乳生産のシェアは13.5%となり、国内2番目のシェアとなる。当国の乳製品市場では、ドス・ピノスブランドを販売する牛乳生産者組合が81%のシェアを保持している。
ウ その他
- 政府、IDBから35百万ドルの融資を受け企業競争力強化に着手予定(4/3)
政府は、競争力アップに向け、高度な人的資源育成と企業イノベーション支援を実施すべく、米州開発銀行(IDB)より35百万ドルの融資を受ける。これにより、500名に向けた修士レベルの奨学金提供、200企業を対象としたイノベーション開発への資金提供を行う。ケベドIDBコスタリカ代表によると、コスタリカはイノベーション等への投資が遅れており、類似中進国と比べると、あるべき額の約半分に留まっているとのこと。今後、本融資案は国会審議にかけられる。 - ゴンサレス大臣、次期WTO事務局長選、第1ラウンドで落選(4/12)
11日、次期WTO事務局長に立候補していたゴンサレス大臣は、第1ラウンドで落選となった。第2ラウンドに残ったのはメキシコ、ブラジル、ニュージーランド、インドネシア、韓国からの候補者。一方、コスタリカのほかガーナ、ケニヤ、ヨルダンからの候補者が落選となった。 - 中銀による融資成長率制限策、年内に撤廃の可能性も(4/16)
融資バブル防止のため中銀が1月より導入した融資成長率の制限策について、予定期間(9カ月間)終了前に撤廃する可能性があると中銀総裁が発表。実現すれば既に成長率が上限に近付いている金融機関には朗報となる。総融資額成長率は1月以降、前年比で減少しており、一部からは、融資成長率制限策は、生産性向上の防げになっているとの見方があった。
(2) 対外経済
ア 自由貿易協定(FTA)関係
- 対ペルーFTA、国会2次審議で承認(4/22)
22日、対ペルーFTAが国会第2次審議で承認された。同FTAは2011年6月より国会での審議が続いていた。ペルー市場は3千万の人口を抱え年間6%の成長を遂げており、コスタリカ中小企業にとってチャンスとなる。ペルーは太平洋同盟の重要な加盟国。
イ その他
- 2012年のサービス輸出、前年比11.8%増の55億6千万ドルに(4/2)
2012年のサービス輸出は輸出全体の33%を占める55億6千万ドルとなった。うち、情報通信分野が全体の47.2%を占め、サービス輸出における主要な産業となっている。過去14年にわたり、サービス輸出は年平均9.6%の成長を続けている。 - 中国への酪農製品の輸出が可能に(4/3)
2日、中国の国家質量監督検験検疫総局は、コスタリカからの酪農製品の輸入について衛生基準を承認した。酪農生産組合は、中国市場への進出は間近であるとし、同市場への乳製品等の輸出に期待をかけている。 - OECDの税制に関する情報交換協定を批准(4/5)
財務省は、中米で初めてコスタリカがOECDの税制に関する情報交換協定に批准したと発表。本年8月1日に発効する。脱税を防止し、財政の透明性を高める狙い。 - ゴンサレス貿易大臣、ペルーで開催される世界経済フォーラムに出席(4/23)
ペルー・リマにおいて各国首脳陣・経済界リーダーが集まり世界経済フォーラムが開催される。本フォーラムは「成長の促進、社会の強化」と題され、経済成長やイノベーションを通した社会開発、持続可能な開発などについて意見交換がなされる。同大臣は、この機会に太平洋同盟加盟各国の首脳陣や米州開発銀行総裁らとバイ会談を行う予定。