コスタリカ経済 定期報告(2013年5月)
※出典:中銀発表月次資料(4月又は5月分までの経済数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
1 経済活動指標
- 4月の経済活動指標成長率は、1.89%となった。2~4月の経済活動指標算出において、フリーゾーンの製造業の値に誤りがあり下方修正されたことが影響し、本年2~4月の経済活動指標は大きく低下している。同修正により製造業は本年2月以降マイナス成長となり、4月は▲0.78%となっている。
- 経済活動指標は2013年に入り緩やかに上昇傾向にあるものの、フリーゾーンを除いた指標を見ると回復は遅れているほか、成長を牽引していた企業向けサービスの下降傾向も続いている。
- フリーゾーンの製造業に加え、建設業や商業など主に国内需要を反映する分野でも失速が続いているほか、農業分野も前年比0.35%増と低い値となっており、国内経済の冷え込みが懸念材料となっている。


2 貿易
- 5月の貿易額は、輸入が▲4.8%、輸出が▲7.7%となった。特に、輸出においては、1~5月の累積値でも前年比▲2.2%となり、2009年5月以来初めてのマイナス成長となった。
- 輸出減少の主たる要因は、農業部門及び製造業による減少で、農業部門については国際価格の低下によるところが大きい。製造業については、電子部品を中心にフリーゾーンからの輸出が減少していることが主たる原因で、フリーゾーンからの輸出の大半を占めるインテル社の意思決定によるところが大きいとする見方もあるが、コロン高や、電気料金等の上昇による競争力の低下も原因として挙がっている。
- 輸入の減少は、輸出減少に伴う原料や中間財の輸入の減少に加え、課税時の時価総額算出方法の変更による増税を主原因とした中古車輸入の減少(1~5月累計で約40%減少)が影響しているものと見られている。



3 財政収支
- 5月までの中央政府の財政収支は、歳入が前年同期比9.9%増、歳出が同比13.1%増で、財政赤字の対GDP比率は前年を上回る▲2.1% となった。
- 歳入においては、消費にかかる税収が累積値で前年比▲10%となっており、経済活動の停滞傾向を示している。歳出においては、資本支出が引き続き増加傾向にあり、前年比39.6%の大幅増となっている。

4 物価上昇率
- 5月の物価上昇率は0.22%となり、年間換算値では5.04%と、中銀の目標値である4~6%以内に留まった。
- 4月までの高インフレ傾向の主たる原因であった、公共料金等の規制価格品の上昇傾向が落ち着いたことが物価上昇率の抑制に寄与した。特に、ガソリン価格の下落により一部交通機関が値下げを実施したことの影響と見られている。
- 中央銀行は、今後数カ月間は、今月同様に年間目標値内に留まる傾向が続くと見込んでいる。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 5月も引き続きバンド下限近辺で安定的に推移した。中銀によるドル買い介入は、74百万ドルとなり、前月を20百万ドル上回ったが、289百万ドルの介入を実施した3月と比較すると少ない値となっており、為替レートの安定傾向を示している。

(2) 金利
- 基本預金金利(TBP)(2)はさらに低下し、5月末には6.65%となった。これは、2008年7月以来の低値である。
- 基本預金金利が低下した主たる要因は、国立銀行のコロン建て資金調達金利の低下で、これはコロン建てでの資金需要(主として民間セクターによる)が減少していることによると見られている。投資意欲の低下を示唆しているとの見方もあり、今後の生産活動の停滞が懸念される。


6 外貨準備高
- 5月末時点での外貨準備高は7,885百万ドルとなった。これは、輸入の6.7カ月分にあたり、過去3年間の平均値である4.7カ月分を大きく上回る。5月1日に計上予定とされていた、4月23日発行のユーロ債10億ドル分が4月30日に計上され、4月末時点の残高が7,960百万ドルとなった。

7 主な出来事(5月)
(1)国内経済
ア 財政
- 公的機関に費用削減対策を要請する政令に大統領が署名(5/7)
電気料金等の規制料金の上昇がインフレ上昇圧力になっていることを受け、チンチージャ大統領は、コスタリカ電力通信公社(ICE)やコスタリカ石油精製公社(RECOPE)等5つの機関に対し、費用を抑制し、債務構造を見直すよう要請する政令に署名。
イ FDI等
- 2012年の対外直接投資成長率、ラテンアメリカ平均を下回る(5/14)
国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の報告によると、2012年のコスタリカのFDI成長率は5%で、ラテンアメリカ平均の6.7%、中米平均の7%をそれぞれ下回った。中米ではエルサルバドルが前年比18%と最も高い伸びを見せ、次いでパナマが10%となっている。 - インド通信大手Infosys社、通信分野のインドでの研修に奨学金を提供(5/15)
2012年にコスタリカに進出したInfosys社は、科学技術通信省、貿易省、投資促進機構(CINDE)と共に、クラウド・コンピューティング、ネットワーキングに関する奨学金による研修事業をインドで実施する。 - ウォルマート社、中米最大の配送センターを操業開始(5/18)
ウォルマート社は、約70百万ドルを投資し、中米最大規模となる配送センターを設立。16日、リーベルマン第2副大統領出席のもと、操業開始式典を実施した。同センターは自然光を取り入れ、燃料や水の消費をできるだけ抑えた環境にやさしい設計となっている。約100名の雇用を創出予定。
ウ その他
- 金融機関監督庁、ドル建て貸付の際の審査強化を提案(5/8)
金融機関監督庁は、銀行がドル建て融資を行う際の審査を強化するよう提案、各金融機関は導入に向け検討を進めている。強化策では、ドル建て融資を行う際、為替や金利の変動を考慮して返済能力を審査し、ドル建て収入がない場合にはコロン建てでの借り入れを進める等を実施する。 - 通貨のドル化をめぐり議論活発化(5/9)
エコノミストで企業家のルイス・ロリア氏が通貨のドル化を求める法案を4月に提出し、これに関するフォーラムを開催。ロドリゲス元大統領ら経済関連の専門家が出席し、ドル化をめぐり活発な議論が行われた。変動為替制への移行的措置である現行の為替バンド制はその役割を終えつつあるという前提は概ね共有されつつも、変動制、ドル化への移行の是非や時期については専門家の間で意見が分かれている。 - 58%の企業が為替変動制への移行に反対(5/21)
デロイト社が実施した114社を対象とした企業意識調査によると、58.7%の企業が為替変動制への移行に反対していることが明らかになった。移行がもたらす不安定性が原因のひとつと見られる。また、現状のコロン高による影響について、大きな影響があるとする企業が36.9%、影響はほとんどないとする企業が50.5%であった。 - コスタリカのOECD加盟、2015年に手続き開始(5/30)
30日、OECD閣僚理事会は、コスタリカの加盟交渉に向けたプロセスを2015年に開始すると発表。今後、加盟要件を満たすべくルートマップを策定、加盟に向けた努力を続ける。大統領は本結果に満足の意を表明。民間セクターや各方面も概ね好意的に評価している。
(2) 対外経済
ア オバマ大統領訪問(5/3-4)
- オバマ大統領、将来的な米国から中米への天然ガス輸出を検討する旨言及(5/3)
コスタリカを訪問したオバマ大統領は、SICA首脳会議で中米各国の首脳陣から示された要請に応え、将来的に中米を天然ガスの輸出先として考慮する旨、口頭で合意を表明。中米の電気料金はワシントンの3倍と言われており、天然ガス輸入が可能になれば電気料金の低下が期待できる。
イ 自由貿易協定(FTA)関係
- ジャマイカ、コスタリカ・カリブ共同体間FTA発効を承認(5/7)
ジャマイカは、コスタリカとカリブ共同体との間のFTAの発効を承認した。これで、同共同体ではバルバドス、ベリーズ、ギアナ、トリニダード・トバゴに続く5カ国目となる。輸入会議所、輸出会議所、商業会議所等民間セクターは概ね好意的に評価しており、今後の貿易活発化に期待を寄せている。カリブ共同体への輸出は、2005年の101百万ドルから2012年には223百万ドルまで増加している。 - 中米EU連携協定が国会第1次審議を通過(5/22)
21日、中米EU連携協定が国会の第1次審議で承認された。同協定は8月1日に発効予定となっており、このためには7月15日までにすべての手続きを終える必要がある。今後は、最高憲法法廷で審議された後、第2次審議にかけられる。同協定は、野党議員からの修正案提出により審議が遅れており、農業部門を中心に、民間セクターからは早期の承認が求められていた。 - 対コロンビアFTAに両国大統領が署名(5/22)
22日、コロンビア・カリにて、チンチージャ大統領とサントス・コロンビア大統領は、両国間のFTAに署名を行った。チンチージャ大統領は23日に実施される太平洋同盟首脳会議に出席するため同国を訪問していた。これにより、コスタリカは太平洋同盟加盟への準備(加盟には原加盟4カ国であるメキシコ、コロンビア、ペルー、チリとのFTA締結が条件)が整ったことになる。 - 太平洋同盟加盟4カ国の首脳、コスタリカの加盟申請を承認(5/23)
コロンビア・カリで行われた太平洋同盟首脳会合において、加盟4カ国はコスタリカの加盟申請を承認した。今後、コスタリカは正式加盟の手続きを開始し、加盟条件や手続き期間を決めるべく作業部会を設立する。