コスタリカ経済 定期報告(2013年6月)
※出典:中銀発表月次資料(5月又は6月分までの経済数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
1 経済活動指標
- 5月の経済活動指標成長率は1.68%と引き続き低調であったが、運輸・倉庫・通信業、金融仲介サービス業、企業向けサービス業が若干の回復を見せたことから、全体では前月を0.06ポイント上回った。
- 一方、フリーゾーンを除く成長率は前月よりさらに0.06ポイント低下した。国内需要を反映する建設業、商業で回復の兆しが見えず、農業・林業・漁業部門も低下が続いている。民間セクターからは、中央銀行による、投機マネー流入によるインフレ防止を目的とした、金融機関の融資成長率に制限をかける政策が経済成長を抑制しているとの批判が高まっている。


2 貿易
- 6月の貿易は、輸入前年同月比▲2.7%、輸出同比▲3.3%と、輸出入ともに前月に続きマイナス成長となった。上半期累計では、輸入が前年同期比で1.9%と微増である一方、輸出は▲1.9%となった。
- 輸出においては、フリーゾーン以外の通常レジームからの輸出が前年同月比▲14.2%と減少した。特に、主要伝統農産物であるバナナ(▲30.1%)、コーヒー(▲20.8%)がいずれも大きく減少しており、バナナは輸出量の減少、コーヒーは国際価格の下落が主(2)たる要因である。
- 輸出先地域別では、上半期および6月単月のいずれも、農産物が最大の輸出品であるEU諸国への輸出が顕著に減少している(上半期対前年同期比▲7.5%、6月単月▲12.9%)。



3 財政収支
- 上半期の財政収支は、歳入が前年同期比8.7%増となったことに対し、歳出は10.6%増となり、収支対GDP比は前年同期比よりさらに0.2ポイント悪化し▲2.3%となった。
- 歳入においては、経済成長の鈍化に伴う税収減が要因で、特に輸出に係る税は前年同期比で▲22.3%の大幅減となっているほか、輸入に係る税も同比0.1%増に留まっている。
- 歳出では投資支出が20.2%増となった一方で、前年度増加率の大きかった資本移転は▲1.3%(前年20.3%増)となっており、資本支出全体では1.1%増と微増に留まった。一方、国内債務による金利負担が前年同期比29.9%増と重荷になっている。

4 物価上昇率
- 6月の月間物価上昇率は前月同様の0.02%と低い値に留まり、年間換算値は5.14%と安定的に推移した。電気料金等の規制価格の上昇がひと段落したことと、食料品及びノンアルコール飲料の物価上昇率が▲0.39%とデフレ傾向になったことが主たる要因である。
- 下半期に向けては、規制価格(電気料金、公共輸送料金等)の値上げが実施されない限りは中銀目標値である4~6%以内に収まるものと見込まれている。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 6月の為替レートは引き続き1ドル500コロン付近で推移したが、中銀によるドル買い介入はさらに減少して6.5百万ドル(前月75百万ドル)に留まり、為替レートは安定的であった。

(2) 金利
- 6月末時点の基本預金金利(TBP)(3)は6.60%と前月末よりさらに0.05ポイント低下した。これは、経済活動の鈍化による民間の資金需要の減少に加え、4月に10億ドルのユーロ債を発行したことにより政府による国内市場での資金調達の必要性が低下したことにより、コロン建ての資金需要が減少したことによる。
- 物価上昇率を加味した実質預金金利は1.46%となり、コロン建て預金に対するインセンティブが低下している。これにより投資家の資金が不動産等に流れ込みバブルを誘発する可能性を懸念する声もある。


6 外貨準備高
- 6月末時点での外貨準備高は7,879百万ドルとなった。

7 主な出来事(6月)
(1)国内経済
- コロン建て融資、民間銀行で増加(6/11)
歴史的にドル建て融資で優位性のあった民間銀行がコロン建てでの融資を加速させている。2013年4月の対前年比増加率は、国立銀行9.6%に対し民間銀行は17.5%と大幅な伸び。ドル建てとコロン建ての金利差が縮まってきたことも要因のひとつ。 - 中銀、年間経済成長率が4%を下回るとの見込みを発表(6/19)
中銀は、2013年の経済成長が4%を下回る見込みを発表した。これを受け、セグラ労働大臣は、同経済成長率では政権目標である失業率6%を達成することは難しいとした。また、経済成長の低迷は、社会保険を伴わないインフォーマル雇用や短時間雇用を生み、これが社会保険財源の低下につながりうる点も懸念材料となっている。 - 中銀、政策金利を5%から4%に引き下げ(6/19)
中銀は、6月20日より政策金利を4%に引き下げる旨発表。経済活動指標の低下傾向を受け景気刺激を目的とするもので、インフレには影響を与えないとの判断による。政策金利の引き下げは2011年6月以降初めて。 - 環境に優しいタクシー・バスの導入に向け、日本・韓国の協力のもと融資を実施((6/27)
コスタリカ銀行(BCR)は、JBIC(国際協力銀行)、韓国輸出入銀行の融資を受け、タクシー・バスの購入に向けた融資プログラムを導入する。同融資では、融資提供各国の特定メーカーによる車輌を購入する際に有利な金利となるほか、エコカーであればさらに低い金利で融資を受けられる。これにより、カーボン・ニュートラル達成に重要な要素となるタクシー、バスのエコ化を促進したい考え。 - 第1四半期のGDP成長率、2.43%に留まる(6/29)
中銀は第1四半期のGDP成長率を発表、2.43%と2009年第3四半期以来の低い数値となった。中銀は世界経済の回復の遅れ等の原因によるとしている。民間消費は3.17%の増加で、同様に2009年第3四半期以降最も低い伸び率となっている。民間消費は、大統領選挙前には落ち込む傾向があり、これも一因と見られている。
(2) 対外経済
ア 自由貿易協定(FTA)関係
- ペルーとのFTAを発効(6/1)
1日、ペルーとのFTAが発効となった。主として中小企業の同市場への輸出を図るほか、リマにコスタリカ投資振興機構(PROCOMER)事務所を開設し、関心を持つ企業に対応する。精肉、パルミート(ヤシの新芽)、チョコレート等の同市場への輸出が無税となるほか、ペルーからの輸入についてはアスパラガスやオリーブ、オレンジ等が無税となる。 - 欧州自由連合(EFTA)とのFTAに署名((6/24)
24日、パナマとともにEFTAとのFTAに署名。これにより中米・EU連携協定と合わせて対欧州貿易の促進を図る。同市場への輸出は2002年の64.8百万ドルから2012年には161百万ドルまで増加している。
イ 貿易関連
- 中古車輸入台数40%の減少(6/13)
5月末までの中古車輸入台数は、前年同期比から約5000台少ない7,817台と大幅減となった。新車輸入台数は16,425台(前年17,306台)と微減。2012年後半から2013年にかけ、輸入手続きの遅れや、財務省による車輌価値の見直しによる増税等が続いたことが要因とされている。 - 企業向けサービス輸出、農業と観光業を追い抜く(6/14)
2012年の企業向けサービス輸出はGDPの6%を占め、農業(5.6%)、観光業(5.8%)を上回った。2012n年時点の企業向けサービス業への海外からの直接投資は121社にのぼり、うち73%が米国資本で、42,148の雇用を創出している。
ウ その他
- 世銀、ラテンアメリカ経済成長見通しを3.3%に下方修正(6/13)
世銀は、2013年の経済成長予測を見直し、ラテンアメリカの成長率を3.5%から3.3%に下方修正した。一次品の価格低下と世界経済の低調を主たる要因としている。コスタリカの経済成長率は4%と予想されており、前年の5.1%を下回る数値となっている。 - 中国代表団、経済特区設立の可能性検討のため来訪(6/18)
経済特区の設立可能性を検討するため、中国代表団がプンタレーナス市カルデラを訪問。他にサン・カルロスを訪問するほかカルタゴ、リモン、グアナカステの各地代表と会合を持ち、経済特区設立の可能性について検討する。
(1) La Nación紙, La República紙、La Prensa Libre紙
(2) 2013-14年の収穫期(10月~3月)には、中米一帯で被害が広がっているさび病(カビの一種)による被害が影響し、収穫高は18%減少すると予測されているが、2013年6月時点の輸出は、2012-13期の収穫によるものであり、1~6月のコーヒー生豆輸出量は前年同期とほぼ同量(0.8%増)で、さび病による輸出量への影響は未だ確認されない。(データ:コスタリカ輸出振興機構)
(3)国内金融機関、中銀、財務省による資金調達金利(150~210日)の平均
(2) 2013-14年の収穫期(10月~3月)には、中米一帯で被害が広がっているさび病(カビの一種)による被害が影響し、収穫高は18%減少すると予測されているが、2013年6月時点の輸出は、2012-13期の収穫によるものであり、1~6月のコーヒー生豆輸出量は前年同期とほぼ同量(0.8%増)で、さび病による輸出量への影響は未だ確認されない。(データ:コスタリカ輸出振興機構)
(3)国内金融機関、中銀、財務省による資金調達金利(150~210日)の平均