コスタリカ経済 定期報告(2013年9月)
※出典:コスタリカ中央銀行(8~9月分数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
【ポイント】
- 前月に引き続き、フリーゾーンでの製造業が回復基調にあることから、経済活動指標成長率は4.01%まで回復。一方、フリーゾーン以外の成長率は横ばいが続いている。
- インフレ率は安定的に推移し、年間換算値で5.37%となった。今後、大きな物価上昇要因は見当たらず、また電気料金の値下げが発表されていることから、2013年は中銀の目標範囲である4~6%以内に留まる見込み。
- 9月1日、国会に2014年予算案が提出された。教育費は、憲法で対GDP比8%とすることが定められているが、財政赤字のため7.2%に留まるなど、憲法や法で定められた支出範囲に届かない予算配分となった項目があり、審議の行方が注目される。
1 経済活動指標
- 製造業の回復により、9月の経済活動指標前年比成長率は4.01%まで回復した。しかし、フリーゾーンを除いた成長率は前月同様の2.25%で、本年5月以降の横ばいが続いており、回復の傾向は見えていない。
- 農業・林業・漁業は引き続きマイナス成長となり、前月をさらに0.2ポイント下回る▲0.69%となった。
- 建設業も前月を下回る2.5%の成長率となった。建設業については、8月末まで実施されていた中銀による融資成長率制限策の影響で、住宅を中心とした民間による建設計画が減少したことが主たる要因と見られている。


2 貿易
- 1~9月の累積貿易額は、輸出が前年比▲0.04%の8,663.3百万ドル、輸入が前年比3.3%増の13,376.7百万ドル、貿易赤字は10.1%悪化し4,713.4百万ドルとなった。
- 9月単体では、前年比で輸入が14.7%、輸出が5.9%の増加となった。輸出においては、農産品や食料加工品等の通常レジームからの輸出が減少する一方で、フリーゾーンからの電子部品や医療機器等の輸出が増加し、総額では増加となった。




3 財政収支
- 9月までの財政収支は、歳入が前年同期比8.1%増(前年同値9.5%増)、歳出が12.6%増(前年同値9.7%増)となり、財政赤字対GDP比は前年より0.6ポイント悪化し3.8%となった。
- 歳出増加の主たる要因は、2012年後半からの高金利傾向による金利の増加で、前年比25.4%の増化となっている。また、2011年から2012年にかけて増加率が減少していた給与等の人件費についても、前年比で10.3%の増加(前年同値9.0%)と、再び上昇傾向となった。
- 資本支出については、投資が増加した一方で資本移転が減少し、総額ではほぼ前年同様となった。

4 物価上昇率
- コスタリカ電力・通信公社(ICE)が本年第4四半期に13.6%の料金値下げを実施する旨発表したことで、インフレ圧力要因が減少し、その他大きなインフレ要因は見当たらないことから、2013年は中銀目標値である6%以下となる見込み。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- コスタリカでは9月末が会計年度末にあたるため、これに伴う税金支払い等の会計処理が発生し、企業を中心として9月にはコロン通貨の準備が増加する傾向にある。このため、コロン買いが活発になり、為替レートは1ドル500~504コロンの間で変動した。

(2) 金利
- 基本預金金利(TBP)(2)は引き続き6.50~6.55%で推移した。前年11月、本年4月の計20億ドルのユーロ債発行により政府の資金需要が減少したことと、年初から8月末まで実施されていた中銀の融資成長率制限策による民間の資金需要の減少が主要因。
- インフレ率を考慮すると実質金利は1%前後となることから、金利は底値にあると見られている。今後、民間からの資金需要の回復や、米国を中心とした国際経済情勢により、再び上昇するとの見方もある。


6 外貨準備高
- 9月末時点での外貨準備高は7,600百万ドルとなった。

7 主な出来事(9月)
(1)国内経済
ア 財政関係
- 国会に2014年予算案を提出(9/1)
財務省は前年を3.1%上回る6,649億コロン(約12,899百万ドル)の2014年予算案を国会に提出した。教育費は前年比11%増となる一方で、憲法で定められたGDP比8%には及ばず、7.2%に留まる見通し。また、財源に債務が占める割合は前年を2.6%下回る見込み。予算案は11月末日までに国会で承認される予定。 - 中央政府債務、5年後には対GDP比51%に(9/4)
アジャレス財務大臣は、税制改革を実施しない場合、政府財政赤字は2018年には対GDP比7.3%に達し、中央政府の債務は51.5%に達するとの見通しを示した。財務省では現在財政強化策を策定中であり、付加価値税の導入等により財政赤字を対GDP比3.5%まで改善したい考え。 - ムーディーズ、コスタリカ国債格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に格下げ(9/23)
米格付け会社ムーディーズは、財政改革が進まないことを理由としてコスタリカ国債の格付け見通しを「Baa3安定的」から「Baa3ネガティブ」に引き下げることを発表した。これは、将来的な格付けの引き下げを視野にいれたものであり、投資家の信頼を今すぐ損なうことにはならないものの、今後のユーロ債発行の際にコスト増となる可能性を含んでいる。
イ その他
- 政府、投資誘致に向けた新たなブランドとして「Esencial Costa Rica」を発表(9/3)
貿易省、観光庁、コスタリカ貿易振興機構、コスタリカ投資促進機構は、投資誘致や輸出促進を目的とした国の新たな統一ブランドとして「Esencial Costa Rica」の使用を開始する旨発表した。同ブランドは、2008年から取り組みがスタートし、有名広告会社に委託するなどにより総額65万ドルを投じ、コスタリカに対する世界規模のイメージ調査等を経て作られたもので、今後様々な用途に活用される予定。関係者からは歓迎の声とともに、巨額の費用に対する批判の声も挙がっている。 - チンチージャ大統領、国内CO2排出権取引市場設立を定めた政令に署名(9/11)
コスタリカは開発途上国として初めての国内CO2排出権取引市場を設立した。本市場の設立に際しチンチージャ大統領による政令への署名が行われたほか、ドイツ環境・自然保護・原子炉保全省からの350万ユーロの資金提供を受け、環境エネルギー省とドイツ国際協力公社の提携による「気候行動計画」が正式発足した。CO2市場の管理には、公的機関と民間セクターによる新機関を設立する。 - 統計庁が第2四半期の雇用情勢発表、失業率が前期より0.8ポイント増加し10.4%に(9/20)
統計庁による継続雇用調査(四半期毎に実施)によると、第2四半期の失業率は前期より0.8ポイント多い10.4%となった。この増加は、求職人口の増加によるものと見られている。男女別では、女性が13%、男性が8.8%となったほか、年代別では15~24歳の若年層で21.8%に達するなど、女性と若年層の雇用が課題となっている。 - 2013-14年のコーヒー収穫高、前年比で18%減の見込み(9/21)
コスタリカコーヒー協会は、さび病の影響等により、2013-14年の国内コーヒー収穫高が前年同期比の18.5%減との見込みを発表した。同協会によると、国内の約93千ヘクタールのコーヒー農場のうち6万ヘクタールがさび病の影響を受けているとのことである。政府は対策として20億コロン(約4百万ドル)を投入し、生産者に殺菌剤を提供している。
(2) 対外経済
ア 自由貿易協定(FTA)・貿易関係
- 中米EU連携協定、10月1日発効の見通し(9/20)
チーズ類の地理的表示をめぐるイタリアによる拒否権の発動により、コスタリカでの発効が遅れていた中米・EU連携協定について、EU貿易政策委員会は早期の発効の必要性を認め、これによりEU理事会での承認を得れば10月1日に発効される見通しとなった。
イ 海外直接投資(FDI)関連
- ゴンサレス貿易大臣、投資誘致を目的に中国を訪問(9/9)
ゴンサレス貿易大臣は、投資誘致を目的として中国の廈門、深センを訪れ、コスタリカへの投資を訴えた。廈門では、高虎城商務部長や玉木林太郎OECD事務次長と共に国際投資フォーラムにパネリストとして出席した。貿易省は、ゴンサレス大臣の指揮のもとアジアへの接近を活発化させている。 - チンチージャ大統領、ニューヨークにて企業家朝食会に出席、投資誘致が目的(9/24)
国連総会のためニューヨークを訪問したチンチージャ大統領は、ゴンサレス貿易大臣、ジョベット・コスタリカ投資促進機構総裁とともに企業家との朝食会に出席。同席で英金融関連ITサービスのRule Financial社がコスタリカでのITセンター開設を発表した。電子部品製造大手の独Zollner Elegtronik AG社もコスタリカでの工場建設を進めているほか、社名は公表されていないものの医療機器製造企業も投資を検討しているとのことで、政府が推進しているハイテク・先端科学技術分野での投資が続く見込み。
ウ その他
- JBICとコスタリカ銀行、再生可能エネルギー推進に向けクレジットライン設定の協定締結(9/12)
コスタリカ銀行は、JBICとの間で再生可能エネルギー推進に向け、50百万ドル(JBIC分30百万ドル)を上限としたクレジットライン設定のための一般協定を締結。コスタリカの企業が再生可能エネルギー関連設備等を日系企業から購入するための資金が対象となる。 - 2013年世界経済自由度ランキング、昨年よりランクを下げ63位に(9/19)
フレイザー研究所(カナダのシンクタンク)が毎年発表している世界経済自由度ランキングの2013年版が発表され、コスタリカは前年より21ランク下げて63位となった。これは、ニカラグアやホンジュラスより下位となる。2005年には総合7.3ポイントで20位であったが、その後他国が改善を重ねる中、コスタリカは大きな改善がなかったことが原因とされ、政府当局の姿勢が問われる結果となった。