コスタリカ経済 定期報告(2013年10月)
※出典:コスタリカ中央銀行(9~10月分数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
【ポイント】
- フリーゾーンにおける外資による製造業は急激に回復し、これが全体の経済成長率を押し上げているが、国内産業は引き続き停滞している。特に、農業ではコーヒーの国際価格の低迷の影響を主要因としてマイナス成長となっており、雇用にも影響を及ぼしている。
- 貿易については、9月には年間累計輸出額が前年比をわずかに下回ったが、10月はフリーゾーンからの電子・電気機器の輸出増が寄与し、前年比1.21%の増となった。また、フリーゾーン以外の通常レジームからの輸出も、食料品、プラスチック製品、紙・カートン製品といったセクターにおいて前年同期比で増加に転じた。
- 財務省は、財政改善に向けた検討の土台として「財政強化への道」を発表した。同案は、法案や政府提案とは異なり、現状の課題を分析し解決策オプションを列挙したもので、これを基に今後5回にわたり公開での討論を実施する。討論の結果を踏まえ、1月には最終案を策定し、検討結果は次期政権にも引き継がれる予定。
- 10月1日、中米・EU連携協定が発効。これにより、食料加工品や、砂糖、バナナ、パイナップル等の農産品の分野で輸出増加が見込めるほか、経済協力も強化される予定。EU諸国からの輸入も増加するが、国内での製造が少ない品目が多く、国内産業への影響は低いと見られている。
1 経済活動指標
- 9月の経済活動指標は、引き続き製造業の回復(9.95%増)が牽引し、前年比4.61%の成長となった。しかし、成長の見られる製造業の多くはフリーゾーン内の外国資本によるもので、フリーゾーンを除くと成長率は2.63%に留まり、ほぼ前月と横ばいとなっている。
- 農業分野では、コーヒーの国際価格低迷が引き続き主要因となって、マイナス成長が続いている。
- 2012年は8~10%の前年成長率であった企業向けサービスは、本年にはいってから成長の速度が低下している。9月は、前月からやや盛り返し、4.95%の前年比成長率となったものの、急速な成長を見せる導入期は終わったと見られており、今後も同程度で推移すると予測されている。


2 貿易
- 10月の貿易額は、輸入が前年比▲0.7%となった一方、輸出は前年比11.2%増となった。輸出増を牽引しているのはフリーゾーンからの電子部品・電子機器及び医療機器である。この結果、1~11月の累積輸出額はプラスに転じ、前年同期比1.21%増となった。
- フリーゾーン以外の通常レジームからの輸出は、引き続き停滞しており、前年同月比▲1.0%となった。しかし、食料品が前年比14.3%増、プラスチック関連品が12.4%増、紙・カートン製品が12.9%増など、増加傾向にあるセクターも見られ、これらのセクターでは、北米・中米向け輸出が回復している傾向にある。




3 財政収支
- 10月までの財政収支は、歳入が前年同期比8.1%増(前年同値10.2%増)、歳出が12.9%増(前年同値9.5%増)となり、財政赤字対GDP比は前年よりさらに0.6ポイント悪化し4.1%となった。
- 10月単月で見ると、8月まで前年を下回る伸び率となっていた売上税は回復基調にあり、前年同期比7.7%(前年6.9%)となった。一方、奢侈税は前年比▲0.8%(前年5.5%)となっており、8月末に中銀が実施した、各銀行に対する融資制限策撤廃による経済回復効果の兆しが見えるものの、内需の回復にはまだしばらくかかるものと見られている。

4 物価上昇率
- 10月の物価上昇率は電気料金の値下げが影響し、▲0.76%となった。累計では2.98%となり、2013年の物価上昇率は4.5~5.5%の範囲内になる見通し。
- 電気料金に加え、ガソリン価格の値下げも物価上昇率の低下に寄与した。いずれも、規制管理局により価格が管理されていることから、今回の上昇率の下落はデフレの兆候ではなく、人為的な価格調整によるものと見られている。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 10月の為替レートは1ドル501~503コロン前後で安定的に推移し、中銀によるドル買い介入は実施されなかった。
- 11月以降、年末賞与支払いや、税金支払い等で企業等によるコロン需要が増加する見込みで、ややドル安傾向になることが予想される。

(2) 金利
- 基本預金金利(TBP)(2)は引き続き6.50~6.55%の底値で推移する一方、貸付金利(製造業向け)はコロン建て、ドル建てとも、前月比で上昇した。コロン建て、ドル建てとも資金需要は増加傾向にあり、これが経済成長につながることが期待されている。


6 外貨準備高
- 10月末時点での外貨準備高は7,477百万ドルとなった。

7 主な出来事(10月)
(1)国内経済
ア 財政関係
- 財務省、新たな財政改善策検討の土台となる「財政強化への道」を発表(10/17)
財務省は、財政改善に向けた検討の土台として「財政強化への道」を発表した。同案は、法案や政府提案とは異なり、現状の課題を分析し、これまでに関係セクターとの議論を重ねた結果得られた解決策オプションを列挙したもので、これを基に5回にわたり公開での討論を実施する。討論の結果を踏まえ、1月には最終案を策定する予定。 - 国会財政委員会が2014年予算案を可決、国会審議へ(10/17)
9月30日に提出された2014年予算案が国会財政委員会で賛成多数で可決された。同案は11月1日より国会本会議審議にかけられ、27日に第1次審議、29日に第2次審議が行われる予定。反対を投じた議員からは、給与や広報費が多く社会投資が少ないとの批判が挙がっている。
イ その他
- 第2四半期のGDP前年比成長率2.9%、家庭消費の伸びにブレーキ(10/1)
9月30日の中銀発表によると第2四半期のGDP成長率は2.9%、うち家庭消費は3.03%の伸びとなり、2012年第2四半期以降の停滞傾向を踏襲する結果となった。家庭消費の伸びが停滞する理由としては、生産の停滞、失業率や非正規雇用の拡大、管理価格制のサービス料金(電気料金等)の上昇による家計の圧迫がもたらす購買力の低下、等が挙げられる。 - 電気料金高騰に複数企業が不満を表明(10/7)
今年にはいって約30%の値上げとなっている電気料金をめぐり、P&Gやアムウェイなどの企業がコスタリカ投資促進機構(CINDE)を通して不満を表明。同様の不満はすでにコスタリカ工業会議所からも表明されており、デ・ラ・トーレ電力通信公社(ICE)総裁も問題を認めている。コスタリカの電気料金は周辺諸国よりも高く、国の競争力低下につながるとして問題視されている。 - コスタリカ銀行、エコカーへの優遇融資制度での初案件実施(10/19)
コスタリカ銀行は、エコカー購入に際しての優遇的融資制度を初めて活用し、グアナカステの企業レイナ・デル・カンポ(Reyna del Campo)社に対し40万ドルの融資を実施する。同社はこの制度を活用してバスを購入する。同制度は、JBICおよび韓国輸出入銀行と署名を交わし、タクシー・バスの公共交通機関への融資を実施することを目的としている。 - 政府、電力自由化法案を断念(10/23)
政府は、数カ月にわたり国会審議で進捗が見られなかった電力自由化法案について、関係者の合意が得られなかったとして審議を断念。同法案は2009年8月、アリアス政権下で提出されたが、配電業者や一部議員、
電力関連組合を中心に同意が得られず、一般大企業の要請があったにもかかわらず審議は進まなかった。電力公社は、自由化が実現しなくても2018年までの需要増には対応可能としている。 - コスタリカ、世銀のビジネス環境調査「Doing Business2014」で昨年を上回る102位に(10/29)
世銀が毎年発表するビジネス環境ランキング「Doing Business」の2014年度版が発表され、コスタリカは185カ国中、前年(110位)を上回る102位となった。事業のスタートアップで24ランクの上昇となったほか、建設許可でも37ランクアップした。 - 第4四半期に向けた企業見通し、回復傾向へ(10/30)
コスタリカ大学による企業意識調査によると、第4四半期に向け利益増を見込む事業者が増加傾向にある。この傾向は農牧業、建設業、商業において特に顕著で、建設業、商業では雇用増の見通しも見られる。主たる要因は季節的なもので、多くの農業では収穫期に入るほか、商業ではクリスマス商戦が近付いており、建設業においてもボーナス等の臨時収入により契約が増加する傾向にあるという。
(2) 対外経済
ア 自由貿易協定(FTA)・貿易関係
- 中米・EU連携協定発効(10/1)
10月1日、中米・EU連携協定が発効した。これにより、食料加工品や、砂糖、バナナ、パイナップル等の農産品の分野で輸出増加が見込める。さらに、同協定により経済協力も強化される予定。EU諸国からの輸入も増加するが、国内での製造が少ない品目が多く、国内産業への影響は低いと見られている。
イ 海外直接投資(FDI)関連
- 電子機器受託生産(EMS)大手の独Zollner社、コスタリカに1千万ドルを投資(10/1)
電子機器の受託生産では世界大手15社の1つに挙げられる独Zollner社は、1千万ドルを投資し、コスタリカに製造工場を設立、200人の雇用を創出し、2014年半ばにも操業開始予定。
ウ その他
- グリアOECD事務総長がコスタリカを訪問(10/17)
2015年に予定されているコスタリカのOECD加盟に向けた正式交渉開始に向け、グリア事務総長がコスタリカを訪れセミナーを開催。さらに、「国際ビジネス及び金融の活動に関する適切性、健全性、透明性に関する宣言」及び「インターネットエコノミーの将来に関するソウル閣僚宣言」について、コスタリカ政府とグリア事務総長が署名文書の交換を行った。