コスタリカ経済 定期報告(2013年11月)
※出典:コスタリカ中央銀行(10~11月分数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
【ポイント】
- 経済活動は前月同様にフリーゾーンにおける製造業の伸びが寄与し、前年比成長率は前月の4.85%を上回る4.91%となった。一方、建設業の成長率は1.09%(前年6.78%)と低調に推移しているほか、農業・林業・漁業も、2月以来8カ月ぶりにマイナス成長を脱したものの、成長率は0.09%と低く、回復にはまだ時間がかかるものと見られている。
- 貿易については、輸出が前年とほぼ同水準、輸入は前年比▲1.4%となった。輸出においては、半導体や医療機器等のフリーゾーンからの輸出や、食料加工品がやや増加に転じているものの、コーヒー・バナナといった主要農産品の低迷が足をひっぱった形となっている。
- 11月27日、2014年予算案が国会第二次審議を通過した。歳出は総額6,649,338百万コロン(約13,299百万ドル)で、前年比2.5%増(前年同値7.6%)となる。これによる財政赤字の対GDP比率は6.2%と見込まれている。
- 国立統計局(INEC)による世帯調査(年に1回実施)の結果、首都圏と地方での格差が拡大していることが明らかになった。また、国立四大学によるシンクタンク「Estado de la Nacion」による年間報告書によると、コスタリカはラテンアメリカにおいて、過去10年間で所得格差を示すジニ係数が拡大している唯一の国とのことである。
1 経済活動指標
- 10月の経済活動指標は、前月とほぼ似た動きとなり、前年同期成長率は4.91%となった。引き続き、成長の牽引はフリーゾーンにおける製造業で、これ以外の分野における成長率はまだ回復基調とはなっていない。このため、課題となっている失業率低下にはまだ時間がかかるものと見られている。
- 建設業の成長率が下降傾向にあり、10月の前年比成長率は1.09%に留まった。6.78%の成長を見せた前年同月と比較すると大幅な減少となっている。大型公共工事が減少していることが一因と見られている。


2 貿易
- 11月の貿易額は、輸入が前年比▲1.4%、輸出が前年比0.0%と、低調な動きとなった。輸出においては、半導体等や医療機器等のフリーゾーンからの輸出や、食料加工品がやや増加に転じているものの、コーヒー・バナナの主要農産品の低迷(生産量の低下(バナナ)及び国際価格の低下(コーヒー、バナナ))が足かせとなっている。
- 輸出低迷の主たる要因は米国や欧州の景気動向にあるとされており、10月1日に発効となった中米・欧州連携協定により、今後欧州向け輸出が活発化することが期待されている。




3 財政収支
- 11月までの財政収支は、歳入が前年同期比8.1%増(前年同値9.2%増)、歳出が12.3%増(前年同値10.5%増)となり、財政赤字対GDP比は前月より0.5ポイント悪化し4.6%となった。
- 11月単体では、輸入の減少に伴い、輸入に関する関税等による歳入が対前年同月比で減少(▲10.0%)となったほか、奢侈税も前月に引き続き減少(前年同月比▲3.2%)した。一方で、歳出においては、給与関連費用が前年同月比14.7%増(前年1.8%)と大幅に増加したほか、支払い金利も31.3%の増加となった。

4 物価上昇率
- 11月の物価上昇率は、固定電話料金の上昇が影響し、前月(▲0.76%)を上回る0.17%となった。累計では3.16%となり、本年の物価上昇率は最終的には中銀目標の4%~6%を下回る可能性がある。
- トマト、ジャガイモの価格上昇を主原因として食料品が1.08%の上昇となったほか、ガソリン料金の低下により交通関連費用が▲1.20%となった。その他はいずれも0.5%を下回る小さな動きとなっており、価格変動の大きな圧力は見られない。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 11月の為替レートは、1ドル503.35コロンを最高値に、前月に引き続き500~503コロン前後で推移した。年末に向け予想されているコロン需要の上昇によるコロン高傾向は、今までのところ特に見られていない。

(2) 金利
- 基本預金金利(TBP)(2)は、引き続き6.5~6.55%で安定的に推移している。また、10月にやや上昇傾向となった貸付金利も、11月はほぼ前月同様となっている。


6 外貨準備高
- 11月末時点での外貨準備高は7,398百万ドルとなった。為替の安定化とともに、中銀によるドル買い介入が減少したことで、外貨準備高の増加傾向には歯止めがかかった形となっている。

7 主な出来事(11月)
(1)国内経済
ア 財政関係
- 2014年予算案が国会第二次審議を通過(11/27)
2014年予算案が賛成票27、反対票19で第二次審議を通過した。同予算案は、支出が前年比2.5%増(前年7.6%増)の6,649,338百万コロンとなったほか、財政赤字の対GDP比は6.2%となる。支出のうち、対GDP比8%とすることが憲法で定められている教育費において、予算では7.2%に留まるなど、法や憲法で定められた割当範囲に達しなかった項目があり、一部批判が出ていたが、アジャレス財務大臣による論説記事を主要各紙に掲載するなどにより理解を求めていた。
イ 公共工事関係
- 国境設備改善に向け、貿易省と財務省が法案提出(11/1)
9月30日の中銀発表によると第2四半期のGDP成長率は2.9%、うち家庭消費は3.03%の伸びとなり、2012年第2四半期以降の停滞傾向を踏襲する結果となった。家庭消費の伸びが停滞する理由としては、生産の停滞、失業率や非正規雇用の拡大、管理価格制のサービス料金(電気料金等)の上昇による家計の圧迫がもたらす購買力の低下、等が挙げられる。 - リモン港でのAPMターミナルによる港湾計画、住民の76%が支持(11/10)
リオランダのAPMターミナルとのコンセッションによりリモン港にて計画されている港湾計画についての調査を実施した熱帯科学センターは、住民の76%が同計画を支持しているとの結果を発表した。同計画は、港湾労働組合や環境団体による強い反対があり、9日にも説明会が実施されたものの、反対派からの妨害により会議は途中で中止となった。賛成派住民の中には、会議での暴力を恐れて参加しなかったとの声も挙がっている。 - 政府、南北国境付近及びカルデラ港周辺道路整備のため450百万ドルの借款を要請
政府は、国境付近及びカルデラ港周辺道路整備計画に向け、米州開発銀行(IDB)及び中国協調融資基金(China Co-financing Fund:FCC)に対し、計450百万ドルの融資を要請した。400百万ドルがIDBから、50百万ドルがFCCから拠出される。返済期間は24年、猶予期間6.5年、金利はライボーに準ずる。カストロ公共事業運輸大臣は、同融資に係る法案を12月~1月にかけて国会提出したいとしている。450百万ドルのうち、200百万ドルがリモナル-サンラモン間の4車線化に充てられる。
ウ その他
- Estado de la Nación 年間報告書発表、所得格差広がる(11/12)
国立四大学によるシンクタンク「Estado de la Nación」が毎年発表している年間報告書の第19次報告書が発表された。同報告書によると、過去10年間で格差を示すジニ係数が拡大しているラ米で唯一の国。2012年のジニ係数は0.5178で、過去25年間で2番目に高い数値となっており、貧富格差の拡大を示している。 - 国民統計局(INEC)実施の世帯調査(ENAHO)、格差拡大示す(11/22)
雇用情勢や所得状況等の調査として毎年行われる国家世帯調査が実施され、首都圏と地方での格差が拡大していることが明らかになった。地方と首都圏では、平均所得に約2倍の差があるほか、貧困率も首都圏では16.1%だがブルンカ地方では35.3%に達するなど、大きな差が出ている。 - コスタリカ、米国の「外国口座税務コンプライアンス法」(FACTA)に署名(11/27)
政府は、米国との間で、米国人の国外口座に関する情報共有を行うべくFACTAへの署名を実施した。同法は、米国人が外国金融機関を利用して租税回避することを防ぐべく、金融機関に対し米国籍顧客の口座についての報告義務を課すもの。このためには、コスタリカにおいても安全性の高い情報提供を可能にするシステム構築が求められる。
(2) 対外経済
ア 自由貿易協定(FTA)・貿易関係
- 医療精密機器関連輸出、成長率減退(11/4)
2012年には前年比20%増を記録した医療精密機器関連輸出だが、今年9月時点で前年比1%増に留まっている。コスタリカ貿易振興機構(PROCOMER)によると、企業の生産調整と、米国の需要減退が主たる要因。同分野はフリーゾーンにおいて電子部品関連に次ぐ重要な分野で、輸出額はラ米ではメキシコに次いで2位。 - CAFTA-DRから5年を迎え、世銀は成果を評価(11/5)
間もなく発効から5年となるCAFTA-DR(米国・中米・ドミニカ共和国自由貿易協定)について世銀が評価を行い、コスタリカにおいては輸出の増加、FDIの増加、通信分野と保険分野の自由化といった点で成果が見られたと発表した。また、米国からの輸入品の価格低下により消費者にも利益があったとされている。
イ 海外直接投資(FDI)関連
- 2013年上半期のフリーゾーンへのFDI、前年比53%の増加(11/8)
中銀は、2013年上半期のフリーゾーンへのFDIが前年比53%増の360百万ドルに達したと発表した。フリーゾーン以外を含む全体では15%増の1,335百万ドル。最も投資が多かった分野は不動産関連で、444百万ドルに達する。フリーゾーン以外への投資は前年比30%減となっており、これにはコロン高が影響していると見られている。 - 食料品製造のイタリアGualapack社、コスタリカで製造を開始(11/12)
食料品製造の伊Gualapack社は、5百万ドルを投じて7千㎡の工場を建設、操業を開始した。2017年までに160名を雇用する。同社にとってラテンアメリカでは初の工場となり、中南米地域に出荷する。 - インテル社の社内リストラにより100名の雇用に影響(11/15)
インテル社が計画している社内リストラにより、2800名の雇用のうち100名に影響が出る旨同社が発表。同社の効率性工場に向けた計画によるもので、影響の出る社員は、他ポストへの移動か退職を選ぶことになる。電気料金の高騰等による国の競争力低下によるものとして懸念する見方も出ている。
ウ その他
- 中米経済統合銀行(BCIE)、中米で再生可能エネルギー関連プロジェクト融資増額(11/15)
BCIEは、中米地域における再生可能エネルギー関連プロジェクトへの融資枠を1,500百万ドルまで増額すると発表。BCIEが融資を提供するプロジェクトには、「中米パナマ再生可能エネルギー関連投資促進プロジェクト(Areca)」が含まれる。 - 中国ラ米カリブ企業家サミット開催、約26カ国から1,000名以上が参加(11/25,26)
25日~26日にかけ、第7回中国・ラテンアメリカ・カリブ企業家サミットがサンホセで開催された。開会式にはチンチージャ大統領、ゴンサレス貿易大臣のほか、王欽敏中国人民政治協商会議副主席、于平中国国際貿易促進委員会(CCPIT)副会長、モレノ米州開発銀行総裁が出席。2日間で約2,500の会合が行われ、期間中、各地の投資促進機関や会議所間で計45の覚書が交わされた。