コスタリカ経済 定期報告(2013年12月)
※出典:コスタリカ中央銀行(11~12月分数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
【ポイント】
- 経済活動指標は、フリーゾーンにおける製造業の成長率鈍化により、前月を下回る4.56%となった。フリーゾーン以外での経済活動は引き続き停滞しており、建設業を中心に回復が望まれるが、2月の大統領選挙を控え、民間投資は抑制傾向にあるため、短期的な回復は難しい状況である。
- 貿易については、12月までの累計で、輸入が前年比2.3%増、輸出が1.3%増となった。12月単体では、さび病被害と国際価格低下によるコーヒーの輸出額減少が影響し、輸出は前年同月比0.3%減となった。
- 財政収支は、引き続き金利支払いが財政を圧迫し、12月末時点での財政赤字対GDP比は、前年を1ポイント上回る5.4%となった。これは、1994年に同じく5.4%を記録して以来の高い値であり、次期政権での取り組みが注目される。
- 年間の物価上昇率は、中央銀行目標値の4~6%を下回る3.68%となった。中銀のインフレ抑制策について、専門家の間では、施策を評価する声が多い一方で、保守的施策が経済活動の活発化の足かせにもなっているとの見方もある。
1 経済活動指標
- 11月の経済活動指標の前年同期成長率は、フリーゾーンにおける製造業の成長率の鈍化により、前月を下回る4.56%となった。フリーゾーンを除いた成長率は、前月とほぼ同様の3.08%となっており、フリーゾーン以外のセクターでの経済活動は引き続き停滞気味となっている。
- 建設業の低下傾向も続いており、11月は1.24%と低い水準となった。国内景気の活発化に向け、農業、建設業の回復が望まれている。


2 貿易
- 12月の貿易額は、輸入が前年比▲3.6%、輸出が前年比▲0.3%と引き続き低調な動きとなった。輸出においては、電子部品関連製品が前年比▲5.2%となったことが影響を与えている。年間累計では輸入が前年比2.3%、輸出が前年比1.3%となり、貿易収支は前年より4.3%悪化し6,399百万ドルとなった。
- 農業分野では、コロン高とコーヒーの国際価格低下及びさび病による被害により、2013年の貿易額は前年比7%減になると予測されている。なお、バナナ、パイナップルについては、2013年は前年同様を維持する見込み。
- コスタリカコーヒー協会(ICAFE)によると、12月のコーヒー輸出量は前年を35.6%下回っており、2014年も引き続き影響があるものと見られている。




3 財政収支
- 12月までの財政収支は、歳入が前年比7.7%増(前年同値8.5%増)、歳出が14%増(前年10.5%増)となり、財政赤字は前年比34.6%と大幅に増加し(前年17.6%増)、対GDP比は1995年以降最も高い5.4%に達した。
- 年間を通しての大きな歳出増要因は、資本投資の増加(前年比58%増)と、支払い金利の増加(前年比33.8%増)である。支払い金利については、主に、金利が高い水準にあった2012年に発行した国内債券の支払い金利による。歳入については、経済の停滞を背景に、輸入関連税が伸び悩んだ(前年比1.1%増)ほか、奢侈税の落ち込み(前年比▲6.2%)が主たる原因である。

4 物価上昇率
- 12月の物価上昇率は、前月(0.17%)及び前年同月(0.28%)を上回る0.51%となった。主な上昇要因は前月に引き続き固定電話料金の値上げである。しかし、これ以外には大きな上昇圧力となる要因は見当たらず、この結果、2013年の年間物価上昇率は3.68%となり、中銀目標の4~6%を下回り、1971年以来の低値となった。
- 専門家の間では、低インフレ率は今後の賃金上昇率に影響を与えるとの見方が多く、特に1月に予定されている公務員給与交渉ではその影響は大きいと見られている。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 12月の為替レートは、16日に締め切りを迎えた税金支払いのため企業のコロン需要が増し、前半には1ドル500コロンに貼り付いたが、その後ややドル高傾向となり、26日には1ドル505.02コロンとなった。
- 為替は1ドル500コロン付近で推移しているものの、中銀によるドル買い介入は前年同期に比べると減少している。この理由として、輸出の伸び悩みにより外貨流入が低迷していることや、ドル建て預金が前年比で増加していることから為替市場へのドルの流入が減少している可能性があることが挙げられる。

(2) 金利
- 12月の基本預金金利(TBP)(2)は、前月に引き続き6.50~6.55と低い値で推移した。
- 貸付金利の推移(製造業向け)を見ると、9月以降緩やかに上昇傾向にあり、この傾向は国立銀行からのコロン建て融資で顕著に見られる。これは、7月31日に中銀が各銀行の融資成長率制限を撤廃したことに加え、金融機関監督庁がドル建て融資の際の審査の厳格化を進めていることから、コロン建て融資の需要が高まりつつあることを反映している。


6 外貨準備高
- 外貨準備高は7,314百万ドルと引き続き高水準で推移している。4月に実施した1,000百万ドルのユーロ債発行の後、為替レートの安定化によりドル買い介入の必要性が減少したため、さらなる増加要因は見当たらず、当面は債務支払いによる緩やかな減少を続けるものと予想される。

7 主な出来事(12月)
(1)国内経済
ア 雇用問題関連
- 国立ナショナル大学が経済分析実施、失業は貧困層で大きな打撃(12/3)
国立ナショナル大学が実施した経済分析の結果、下位5分の1 を占める貧困層における失業率は、全体平均(8.5%)の約2.9倍の24.5%に及ぶことが明らかになった。この値は、前年を2.9ポイント上回る。また、民間セクターにおける雇用創出も減少している傾向も明らかになった。 - 2014年の民間企業雇用見通し、増加の見込み薄く(12/12)
商業会議所とマンパワー社がそれぞれ実施した調査によると、2014年の人員計画について、回答企業の7割が2前年比で増員する予定はないとしていることが明らかになった。経済成長が低調なことと、2014年の大統領選挙による情勢変化を避けることに加え、新財政改革の行方が不透明な点も企業判断に影響を与えている。
イ 金融市場関連
- ドル建て融資、11月には減少傾向へ(12/6)
前年比20%前後で増加していたドル建て融資の成長率に若干の歯止めがかかり、11月の前年同月比成長率は15.5%に留まった。一方、コロン建て融資は同比8%となっており、以前ドル建て融資の伸びは大きく、中銀は引き続き懸念を示している。 - 中銀、証券取引所改革法案を2014年3月にも提出(12/13)
中銀は、企業の証券取引市場参入を促進すべく、証券取引所改革法案を2014年3月の提出に向け準備中である旨発表した。改革案では、店頭市場取引が可能になるほか、現在は株式売買より低い課税率となっている不動産売買による利益への課税率(5%)を、株式売買による利益への課税率(8%)と同様にすることも検討されている。
ウ その他
- 1000人あたりの起業率、コスタリカがラ米でトップ、世銀報告書発表(12/6)
世銀が発表した報告書「ラテンアメリカにおける起業」によると、2004年~2011年の間、コスタリカでは1000人中16件の起業が行われ、これはラテンアメリカでトップとなる。アンティジョン経済商業大臣は、これはインフォーマルセクターの減少を示すものとコメントしている。一方、ラ米内で起業した事業者の多くは雇用を生むには至らない個人零細事業者に留まっている。 - コスタリカ石油精製公社(RECOPE)、石油購入のため海外での債務増加(12/9)
中銀は、ドル建てでの国外債務が増加傾向にあるとしてコスタリカ石油精製公社に対し懸念を表明した。RECOPEでは2011年より海外の銀行からのドル建てでの短期借入が増加傾向にあり、値上げが認められない場合、2014年は赤字に陥る可能性があるとしている。 - 11月の消費者態度指数、クリスマス前にも関わらずさらに低下(12/9)
ウニメール社発表の11月の消費者態度指数は、前月を0.4ポイント下回る3.7となり、2013年で2番目に低い数値となった。同数値は、10段階で消費者の経済環境に対する信頼度や消費態度を測定したもので、数字が大きいほど楽観的であることを示す。悲観的見通しとなる要因のひとつは雇用情勢にあると見られている。 - 害虫被害によりバナナ収穫にダメージ、政府は1年間の植物衛生国家緊急事態を宣言(12/10)
農牧省によると、果実に傷をおよぼす害虫の発生により、24千ヘクタールに及ぶ農場が被害を受けている。害虫による被害は、外皮を黒く変色させるもので、見た目のみの影響ではあるが、輸入国側で拒否されるには十分とも言え、輸出に大きな影響が出る見込み。 - CEPAL発表の2014年経済成長予測、コスタリカはラ米カリブ平均をやや上回る4%(12/12)
国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)が発表した2013-14年経済予測によると、2014年のコスタリカ経済は、ラ米カリブ平均の3.2%をやや上回る4%になる見込み。2013年はラ米カリブ全域が2.6%、コスタリカが3%と予測しており、これはパナマ、グアテマラ、ニカラグアを下回る。 - 第3四半期のGDP成長率3.73%、緩やかに回復傾向に(12/30)
中銀発表によると、2013年第3四半期のGDP成長率は3.73%となり、2%台であった第1四半期(2.37%)、第2四半期(2.88%)から緩やかな回復基調を見せた。中銀では、回復の要因は世界経済の緩やかな回復による外需の成長にあると見ている。
(2) 対外経済
ア 自由貿易協定(FTA)・貿易関係
- 日本への豚肉輸出、再開へ(12/20)
2012年には前年比20%増を記録した医療精密機器関連輸出だが、今年9月時点で前年比1%増に留まっている。コスタリカ貿易振興機構(PROCOMER)によると、企業の生産調整と、米国の需要減退が主たる要因。同分野はフリーゾーンにおいて電子部品関連に次ぐ重要な分野で、輸出額はラ米ではメキシコに次いで2位。
イ 海外直接投資(FDI)関連
- 独バイエル社、コスタリカで新技術を用いた避妊器具の製造開始を計画(12/10)
製薬大手の独バイエル社は、2014年に新たな避妊器具の製造工場をコスタリカに開設する計画を発表。2015年までに3百万ドルを投資し、150名を雇用する予定。 - 2013年のハイテク分野投資、当初目標を上回る583百万ドル(12/18)
貿易省とコスタリカ投資促進機構(CINDE)は、2013年のコスタリカへのハイテク分野での外国投資が計583百万ドルとなり、7,123の新規雇用を創出した旨発表した。これは、43の新規案件を含むもので、当初目標を上回る。企業の金融サービスセンターや、テクノロジーセンター開設等のサービス分野での投資に加え、電子機器の製造工場設立等で投資があった。 - ドス・ピノス社、パナマで25百万ドルの投資(12/10)
コスタリカ乳製品協同組合のドス・ピノス社は、今後5年間で毎年約5百万ドルを投資し、パナマでの体制を整える。同社はすでに86百万ドルを投資しパナマ国内に工場を設立しており、今回の投資は第2段階となる。パナマでは協同組合ではなく供給事業者として事業にあたる。
ウ その他
- ゴンサレス貿易大臣、バリにてWTO閣僚会議に出席(12/9)
ゴンサレス貿易大臣はバリにて開催されたWTO閣僚会議に出席し、バリ・パッケージ妥結について、同協定により、貿易の迅速化・コスト削減につながるとして満足の意を表した。 - コスタリカ、日本との間で二国間クレジット制度に関する文書に署名(12/9)
カストロ環境エネルギー大臣は、訪日中に石原環境大臣とともに二国間クレジット制度に関する文書への署名を実施、運営に向け両国間で委員会を設立する。同制度実施は、日本にとって、モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシアに続き9カ国目となる。