コスタリカ経済 定期報告(2014年1・2月)
※出典:コスタリカ中央銀行(1~2月分数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事(1)による。
1 経済活動指標
- 1・2月の経済活動指標の前年同期比成長率(表1)は、各2.40%、4.10%となった。2月には、主産業である製造業において数値が前年同期比を上回り(プラス1.64ポイントの1.66%)、また各種サービス業においても安定した成長率を維持した。特に金融仲介サービスにおいて成長が堅調であり、2月には前年同期比約12%の成長を見せた。また、農林漁業(0.7ポイント上昇しプラス2.81%)、建設業(1.9ポイント上昇しプラス3.97%)などでも成長が見られた。農業に関しては、欧米がこの冬に大寒波にみまわれたことから、同地域で輸入果物や花卉の需要が拡大し、前年からの数値改善につながった。

2 貿易
- 貿易額(表2)に関し、輸入額は1月が1518.3百万ドル(前年比▲2.9%)、2月が1371.8百万ドル(前年比プラス1.3%)となった。輸出額は1月が856.9百万ドル(前年比▲5.9%)、2月が960.2百万ドル(前年比プラス3.0%)となった。結果、2月時点での累積輸入及び輸出額(表4)は各2890.1百万ドル、1817.1百万ドルとなった。貿易収支(表3及び表4)は、1月に前年比約▲10百万ドルとなったが、2月の輸出額の改善(前年比約プラス27.8百万ドル)により、2月時点では前年とほぼ同値まで持ち直している。輸出に関しては、2月に主要品目である電子関連製品輸出額が前年比5.2%増となったことが全体数値の改善につながった。しかし、累積貿易額の成長率推移(表5)では2月時点で輸出、輸入額とも前年比マイナス成長となっている。
- 1月の輸入額が前年同期比からの減少となった要因としては、1月以降の急激なドル高傾向や、大統領選挙中による今後の経済政策の不透明さなどが消費者の買い控えを招き、輸入品の需要を停滞させたことが考えられている。
- コスタリカの主要輸出品目であるコーヒーに関しては、中米地域のさび病やブラジルの旱魃により世界市場での取扱量が減少したことにより、年始から価格が上昇し続けている。コスタリカはさび病の影響から比較的回復傾向にあるため、今期の収穫後も高値傾向が維持されれば、コーヒー輸出額が急増する可能性がある。




3 財政収支
- 1月までの財政収支(表6)は、歳入が前年比約9.1%増(前年同値10%)、歳出が前年比約1.3%増(前年同値16.2%)となり、財政赤字は前年比約▲6.7%となった。財政赤字の対GDP比では前年よりも0.1ポイント低い0.8%となっている。
- 2月までの財政収支(表7)は、歳入が前年比約5.4%増(前年同値17%)、歳出が前年比約6.7%増(前年同値14.3%)となり、財政赤字は前年比約8.8%増となった。財政赤字の対GDP比は、1月に前年より0.1ポイント減少したが、2月は逆に前年より0.2ポイント高い1.4%となった。
- 財務省は、現在の財政赤字状況が維持されれば、本年中に対GDP比6%(昨年5.4%)に到達するとの見通しを立てている。


4 物価上昇率
- 1月の物価上昇率(表8)は前年同月(1.31%)を下回る0.75%となった。また、2月も前年同月(1.03%)を下回る0.67%となった。年率換算値(表9)ではそれぞれ3.10%、2.74%となり、昨年11月以降の歴史的な低インフレ状態が維持されている。
- 現在のドル高が電気、燃料、高速道路料金などコモデティに反映されれば、今後数値の上昇が見られる可能性がある。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 対米ドル為替レート(表10)が年明けから急変し、12月末から2月末までに1米ドル約500コロンから約550コロンまで上昇した。主な要因としてはさび病によるコーヒーの輸出量低下に伴う外貨収入の減少、コロンの低金利による外為市場における米ドル志向、公的機関によるドルの大量買付けなどに起因する外為市場での米ドル不足などがあげられている。3月以降に予定されている政府のユーロ債の発行(10億ドル規模)により、外為市場への米ドルの流入及び4月に予定されている次期政権の金融政策方針の発表以降は、現在のドル高傾向に一定の収束が見られる可能性がある。

(2) 金利
- 1月・2月の基本金利(表11)は前月に引き続き6.00~6.55と低い値で推移した。
- 貸付金利の推移(製造業向け表11)を見ると、昨年9月から上昇傾向にあった国立および民間銀行のコロン建て金利は、1月に高止まりし、以降は微減の傾向を見せている。他方でドル建て金利は、国立・民間銀行双方で昨年9月以降の微増傾向を維持している。現在までのところ、年明け以降の急速なドル高コロン安の傾向は、2月時点では金利に大きな影響を与えていない。

6 外貨準備高
- 1月末、2月末時点の米ドル準備高(表12)は各7,258.3、各7,275.1百万ドルとなった。昨年3月の10億米ドル規模のユーロ債発行による外貨流入により、昨年4月以降は常に7000百万ドル超える外貨準備高を維持しており、1、2月もこの傾向は維持され、両月とも前年よりも高い数値を示している。今年3月以降に同規模のユーロ債発行となれば、急激な外貨準備高の増加が予想され、その後は昨年と同様の推移となることが予測される。

7 主な出来事(1・2月)
(1)国内経済
ア 財政関係
- 財政赤字対GDP比5.4%まで上昇、金利に打撃(1/23)
前日、財務省は2013年の政府の財政赤字が1.3兆コロンとなったことを発表した。これは対GDP比5.4%に相当し、同省の当初の予測値5.0%を上回る。要因として、政府歳出額が前年から14%増加した一方で、歳入額が9%の増加にとどまったことがあげられている。この結果は銀行の金利に反映され、一般市民の生活に影響を及ぼす可能性がある。財政赤字は、公務員手当や税制の改革などによって早急に対処すべき問題だが、これまでのところ大統領選挙における中心テーマとなっていない。財務省は、現在の状況が継続すれば、2014年中に財政赤字は対GDP比6.0%に達すると見込んでいる。 - コスタリカの対外債務額がさらに増加(2/3)
コスタリカの対外米ドル債務額が急増している。近年、特に公的機関の対外債務は年率20%を超えるペースで増加している。現在、公的機関の国内外での負債額は13.5兆コロンに上り、対GDP比約54.7%に相当する。そして、その約4分の3を政府が負っている。ユーロ債の発行や、電力・通信公社(ICE)や石油精製公社(RECOPE)による債券発行やローン導入が事態に拍車をかけている。また、米国連邦準備制度(FRB)が金融引き締めに政策転換したことで、これまで抑えられていた米ドル債の金利上昇も懸念されている。専門家からは、ドル金利がコスタリカにとって有利な内に素早くユーロ債を発行すべきだとの意見がある一方で、財務省関係者は、米ドルの金利上昇が見られたとしても、依然として歴史的に低い数値を維持しているため大きな問題ではないという見解を示している。
イ 為替
- ドル高7つの要因(2/24)
①ローカル産業(コーヒー産業など)の輸出不振。
②2012年から2013年始めにかけてコロンの高金利が呼び込んでいた国外の米ドルが、現在コロン金利が下がっていることで流出しているため。
③世界同時不況後にドルを忌避しコロンを志向するする動きがあったが、現在米ドルが安定傾向にあることにより、再び米ドル志向が高まっているため。
④2012年11月および2013年4月にユーロ債発行によって獲得した米ドル(各10億ドル)が市場で尽きてきたため。
⑤ドル建てローン利用者が増加しており、その返済のためのドル需要が伸びているため。
⑥銀行以外の公的機関で米ドルの大量買い付けがあったことにより、外為市場での米ドル流通量が減ったため。
⑦米国連邦準備制度(FRB)の金融引き締めへの政策転換。
ウ 雇用関連
- やる気のある女性は支援を受けられる(2/28)
2月27日、女性の経済的自立のための国家支援ネットワーク導入への政令が、チンチージャ大統領によって署名された。これは国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)による「中米における女性の雇用改善を通じての生産的発展促進プラン」の一環であり、多様な機関による女性自立支援ネットワークの確立を目指す。 - 公務員組合は次期政権に給与体系の改革を求める(2/26)
公務員の給与引き上げに関し、当局側から満足のいく回答が得られなかったとして、教員組合が首都サンホセで大規模な抗議デモを実施した。教員組合は、政府側の給与引き上げ率0.43%の提示に反発している。他方で労働・社会保障省は、交渉の席から自ら離れたのは教員側だと訴えており、協議は平行線をたどっている。大統領選挙中のデモは、次期政権への組合側からの牽制の意味も含まれている。アラヤ、ソリス両大統領候補は教員側の意見に理解を示す一方で、デモという手段に対しては批判することで一致している。同組合は3月20日にもチンチージャ政権へのデモ実施を予告している。
(2) 対外経済
ア 自由貿易協定(FTA)・貿易関係
- コスタリカは自由貿易協定に関してエルサルバドルを訴える(1/7)
ゴンサレス貿易大臣は、コスタリカは1月20日に、エルサルバドルが米国・中米間自由貿易協定(DR-CAFTA)で定められている加盟国間の関税撤廃規則を遵守しなかったことを調停にかける予定であることを認めた。エルサルバドルはコスタリカのフリーゾーンから輸出されたタイヤと濃縮果汁に対し、本来は免除されるはずの関税(それぞれ10%と15%)を課していた。昨年9月23日、コスタリカが両国間による解決を図ろうとしたが交渉は難航し、今回の決断に至った。食品産業商工会は、コスタリカの食品輸出の44%は中米向けであるため、加盟国間の規則をより明確にしていく必要があると述べた。 - コスタリカは2014年末までに太平洋同盟加盟への準備を整える方針(2/11)
太平洋同盟加入のメリット面が強調され、疑問点がぼやかされている(2/12)
コロンビアのカルタヘナで第8回太平洋同盟首脳会合が開催され、その場でチンチージャ大統領は加盟証書に署名した。今後は国内で加盟に向けて委員会を発足していく予定である。一定の業界団体は、加盟によるアジアやヨーロッパへの貿易拡大の可能性を期待している一方で、太平洋同盟加盟国の大半とは既に自由貿易協定を結んでいるために、加盟による利益の増加は限定的ではないかという疑問の声も上がっている。また、コスタリカの国際競争力に関わるエネルギーコストや港湾インフラの整備の問題、加盟国の経済が類似しているために国内産業が淘汰される可能性といった懸念も言及された。 - 需要の低下がバナナ輸出を抑制(2/26)
コスタリカのバナナ輸出量が2011年以降、年間804.9~823百万ドルの間で推移し、伸び悩んでいる。その背景には、主要輸出先であるヨーロッパでの需要の伸び悩みと、競合国としてのグアテマラの台頭などがある。しかし、2013年10月1日よりユーロ圏への輸出1トンあたり134ユーロの関税が124ユーロへ下げられ、今後2020年までに段階的に75ユーロまで引き下げられる予定となっており、今後の輸出増加が見込まれている。コスタリカバナナ公社(Corbana)はその変化に合わせて作付面積を約5,000ヘクタール拡大し、計50,000ヘクタールにしていく予定である。その一方で、同公社は、従来の耕作地の疲弊化や転作も進んでいることにも言及した。
イ その他
- 輸出関連手続きは100%デジタル化へ
コスタリカ政府は2014年の第1四半期中にも、貿易関連の手続き効率化のためのデジタル窓口VUCE2.0導入を予定している。同システムにより、これまで16の関連機関で直接行われていた申請や登録の手続きが、デジタル窓口で24時間365日可能になる。企業は自社の管理システムを同システムに組み込むことや、自身が行った手続きの進行状況を確認できるようになる。米国ジョージア・テクノロジー研究所による調べでは、VUCE2.0導入により、企業は数千万ドル単位で節約でき、手続き作業に要していた労働時間も90%削減できる見込みである。同システムは将来的に税関管理情報技術(TICA)のシステムとも連動する予定となっている。