コスタリカ経済 定期報告(2012年9月)
※出典:中銀発表月次資料(8月又は9月分までの経済数値)
主な出来事については各省庁プレスリリースおよび当地新聞記事による。
1 経済活動指標
- 9月分数値は未発表(11月8日発表予定)。
- 8月までの動向は前月報告の通り。
2 貿易
- 1~9月の累積貿易額は、輸出が前年比9.5%増(1)の8,537.8百万ドル、輸入が前年比9.3%増の13,000.3百万ドル、貿易収支は▲4,462.6百万ドルとなった。
- 9月単月で見ると、輸入額が前年同月比2.9%増、輸出額が同比▲7.3%となり、輸出は2011年1月以来マイナス成長となった。フリーゾーンからの輸出が前年比13%減となったほか、通常レジームからの輸出も5.5%の減となった。地域別輸出額では、いずれの地域への輸出も減少し、中でも北米向け輸出が約240億ドルの減(▲6.4%)と最も多く、次いでカリブ地域向け輸出が230億ドルの減(▲48.2%)、ヨーロッパ向けが約180億ドル減(▲11.6%)となった。
- 輸出額の増加率の減少は、為替レートのコロン高傾向が進み、1ドル=500コロンの下限バンド近辺で推移しはじめた6月頃から緩やかに進行しており、コロン高の輸出への影響が懸念される。




3 財政収支
- 8月までの中央政府の財政収支は、歳入が前年比9.8%増(前年8.4%)、歳出が10.7%増(前年10.2%)、財政赤字対GDP比率は▲2.9%となった。国債費を含まないプライマリーバランスは▲363,334百万コロン(727.8百万ドル(2))、対GDP比率▲1.6%であった。
- 歳入に関しては、税収が前年比10.4%増(前年9.1%)となった。特に、国内需要の増加に伴い所得税及び国内売上税の伸びが大きく、それぞれ13.2%(前年8.3%)、12.4%(前年6.7%)の増加となった。
- 公的債務は前月比で1.3%増加し、8月末時点での債務残高は20,865百万ドル(対GDP比率46.0%)に達した。増加分は国内での債券発行である。中央政府の債務残高は14,200百万ドル(対GDP比率31.3%)となった。


4 物価上昇率
- 9月までの物価上昇率は、累積値で2.96%となり、前年同期の3.23%を0.27ポイント下回り低い水準となった。年間換算値では4.47で、年間目標範囲内となっている。
- 物価上昇率の算出基準となる基礎バスケット292品目のうち水道料金をはじめ49%が前月より上昇した一方で、トマト、タマネギ、コーヒー、テレビ、携帯電話等39%が下落、12%が前月同様となった。


5 為替・金利
(1) 為替レート
- 為替レートは引き続きバンド下限である1ドル500コロンに貼り付いた状態となった。9月には、中銀は、前月の56百万ドルを大きく上回る計231百万ドルのドル買い介入を行った。コロン高傾向は今後も当面続くと見込まれている。

(2) 金利
- 金利高傾向は続いており、基本預金金利(3)は10.00%~10.50%の高水準を維持している。9月末時点での金融機関貸付金利平均はコロン建てが19.92%、ドル建てが10.88%となり、コロン建て金利の金利高傾向が続いている。


6 外貨準備高
- 9月に行われたドル買い介入が主たる原因となって、外貨準備高は前月比で241.8百万ドル増加し、初めて50億ドルを超え、5,139.8百万ドルに達した。これは輸入額(4)の4.6倍に当たり、十分な準備高と言える。

7 主な出来事(9月)
(1)国内経済
ア 財政関連
- 財務省、2013年予算案を国会に提出(9/1)
2013年の歳出は2012年比7.7%増の6兆4千億コロン(約128億ドル)、債務比率は43%、財政赤字の対GDP率は5.26%(2012年5.39%)となる見込み。歳出のうち47%強が教育や住居等の社会福祉分野に充てられ、資本投資は約10%の減少。歳入は11.7%の増。 - 8月までの財政収支、前年同様のリズムで推移(9/20)
8月までの財政収支は、税収が10.4%の増(前年同期9.1%)、歳出は10.7%の増(前年同期10.2%)で、財政赤字は引き続き増加傾向となった。税収増は所得税と売上税の増加が主たる要因だが、乗用車や家電製品の輸入増傾向が落ち着きを見せつつあることから増加率は減少傾向にある。歳出は、給与等の伸び率が低下した一方で、経常移転や資本支出が増加となった。
(2) 対外経済
ア 対外直接投資
- サービス分野が過去5年間で2倍に拡大、サービス輸出も好調(9/17)
過去5年間でサービス業セクター(旅行、情報通信サービス、企業バックオフィスサービス)が著しい拡大を見せ、サービス輸出は2006年の695百万ドルから2011年には2,100百万ドルに増加。コールセンター、金融アナリシス、データ分析、ソフトウェア開発などの分野ではグローバルレベルの企業が進出、3万8千の雇用を創出している。
イ FTA・経済協定等
- 貿易省、ペルー、シンガポール、メキシコとのFTAの早期国会承認を要請(9/21)
国会での承認待ちとなっている3つのFTAに関し、貿易省は国会議員に対し早期承認を要請。これら3つ(メキシコは近代化交渉)のFTAについては障壁は殆どないとされているが、対コロンビア及び対カナダ等の他のFTAと共に審議される可能性が高い。野党市民行動党(PAC)は、新規FTAの承認に先駆け、これまでに発効されたFTAの効果についての分析調査を求めており、この報告がなされるまでは新規のFTA審議は行わない構え。 - 対コロンビアFTA交渉第2ラウンドをサン・ホセで実施(9/24~28)
対コロンビアFTA交渉の第2ラウンドがサン・ホセにて行われ、一般規則についてはほぼ合意に達し、市場アクセスに関する議論に入った。コスタリカ側は製造業部門で、前回交渉時の62%より多い87%の市場開放を提案したが、コロンビア側は当初より100%の開放を要求しており、コスタリカ工業会議所や食料加工業会議所は本FTAへの反対の声を強めている。次回交渉はボゴタにて10月21日から行われる予定。
ウ その他
- 経済省、タクシー連盟、政府系金融機関によるタクシー事業者向け融資制度実施(9/4)
経済省、政府開発金融システム(Sistema Nacional de Banca para Desarrollo、SBD)、国民労働銀行(Banco Popular y de desarrollo comunal)は、タクシー連盟と連携し、タクシー事業者が新車購入時に有利な金利で利用できる融資制度を実施する。個人タクシー事業者が利用できる融資制度はこれまで多くなかったが、本制度により、保険庁への登録等一定の条件を満たせば有利な金利で融資を利用できる。政府は本制度により、大気汚染のより少ないタクシーへの更新を推進したい考え。 - 8月までのインフレ率、過去30年で最も低水準(9/5)
1~8月までの累積インフレ率は2.89%、年間換算率は4.23%と過去30年間で最も低い数値となり、中銀の年間目標値である3~5%以内を達成する見込み。専門家は、原材料価格の上昇や小麦等の上昇による影響がまだ反映されていないとして楽観視はしていないものの、年内のインフレ上昇圧力は低いとしている。 - コスタリカ、2012年競争力ランキング(世界経済フォーラム)でランク上昇(9/6)
コスタリカは世界経済フォーラム発表の2012年競争力ランキングで昨年よりランクを上げ、144カ国中57位となった(前年61位)。企業内でのイノベーションや組織体制強化、教育・福祉の改善、労働効率性の改善等が寄与した。インフラ整備と政府財政面で課題が残り、ラテンアメリカ内ではチリ、パナマ、ブラジル、メキシコに次ぐ5番目。 - 金融監督庁長官辞任、中銀の国家金融システム監督委員会(CONASSIF)への政治的介入を指摘(9/15)
14日、フランシスコ・レイ(Francisco LAY)金融監督庁長官が辞任を発表し、中央銀行が国家金融システム監督委員会を通し同庁への政治的介入を行っていると訴えた。これに対し中銀及びCONASSIF側は否定している。金融監督関連機関では、CONASSIFのガルシア(Alvaro GARCÍA)前委員長が8月に辞任を発表したばかり。 - 8月までの輸出額、成長傾向続く(9/20)
1~8月までの輸出額累計は7,656百万ドルとなり、前年同期比9.9%増となった。増加の主たる要因は電子部品等のフリーゾーンからの輸出で、前年比14.2%増の3,996百万ドルであった。 - 米国の干ばつにより米国向け食肉輸出増の可能性(9/26)
干ばつにより米国での食肉生産が4%減になるとの米国農務省の予測を受け、コスタリカ貿易振興機構(PROCOMER)は米国向けの牛肉輸出増の可能性を示唆。これにより、将来に向けた米国輸入業者との関係構築につながりうるとしている。 - リモン迄の道路拡幅工事、中国が400万ドルの融資(9/26)
エレディア県リオ・フリオからカリブ海沿いの港湾都市リモンへの約106kmの道路拡幅工事に際し、中国から400万ドルの融資を受ける旨リーベルマン第2副大統領が発表。年利3.5%、返済期間は20年。工事は30カ月にわたって行われ、主要契約先は中国企業となる予定。 - 雇用創出増加にも関わらず、失業率依然高水準(9/28)
統計局は当国の労働市場について、2011年第2四半期から2012年同期にかけ19万の雇用が創出されたが、失業率は9.8%から10.2%となったと発表。この理由として、求職者の増加率が雇用の増加率を上回ることが挙げられる。失業率は女性においてより高く、男性8.2%に対し女性は13.5%となっている。
(1)中銀数値による。コスタリカ貿易促進機構発表数値では前年比8.4%増
(2)8月売買平均値($1=499.20コロン)で換算
(3) 国内金融機関、中銀、財務省による資金調達金利(150~210日)の平均
(4) 輸入額は2012年7月のRevisión del Programa Macroeconómico発表数値を使用。フリーゾーン等特別レジームでの原料輸入高を除いた額。